数学者。おそらく世間的な認知度としては、フラクタル幾何学の創始者として一番有名だろう。海岸線や自然物の表面などは、数学的な線や面がそうであるような、きれいな線・面になっておらず、見れば見るほど細かくでこぼこしている。これを非整数次元であらわすことにより、新しい数学の一面を開いたのがかれの功績だ。これ以外にも、確率論その他でのマンデルブロの貢献は計り知れない。
経済学の分野でのマンデルブロの功績は、ファイナンス分野のものだ。株価のランダムウォークを説明するための「効率的市場仮説」の考案だ。市場がファンダメンタルズにしたがって動いているのであれば、本来ならファンダメンタルズの変化にあわせて規則性のある価格変動が見られると思われる。でも、もし規則性があったら、投資家はそれを利用してさや抜きができてしまう。市場価格のランダム性は、投資家たちが情報を効率的にすべて利用して判断を行っていることの反映なんだ、というのがこの理論だ。そして、ファンダメンタルズに関わる情報は、ランダムにしか起こらない。だから資産価格の変動はランダムになる、とマンデルブロ (1966) は市場の統計的な分析により主張している。
一方でかれは、株価の変動がランダムではない、少なくともバシュリエが述べたようなランダムウォーク/ブラウン運動的なランダムさではない、という研究も続けている。株価なんかの資産価格は、ときどき大きな急変を示す(ブラックマンデーとか)。多くの経済分析では、これを異常値としてはずす。でもマンデルブロは、これは異常値ではないと述べている。株価変動の動きは実は二重フラクタル性を持っていて、ここからそうした「異常値」も当然あり得る、とかれは 1960 年代以来ずっと主張し続けている。一方で、それまで学会からはほぼ無視されていた、そのバシュリエの業績に光をあてたのも、主にマンデルブロ (1962, 1966, 1872) だろう。
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