以下は、民間コンサルに巣くう三流コンサル山形が、日本の経済学のホープと目される小野善康教授におそれ多くもアヤをつけてはたしなめられた一部始終だぁっ! 近き者は目にもみよ、遠からん者は TCP/IP にても読め!
なお、いずれの掲示板もちょっと書き込みにくい構造になっているため、実際に出たときにはどれもかなり崩れていた。特に稲葉掲示板は、自分で html のタグを入れないと文に区切りがなくなって切れるので、小野さんはかなり苦労してたみたい。また、どっちも最新のものがてっぺんにくる構造になっているので、時系列に議論を追うのが困難だった。今回はそれを時系列順になおして、さらにこちらの判断で分裂した書き込みを再構成し、適切なタグをつけて読みやすくしてある。さらには、稲葉掲示板の書き込みのタイトルは山形が勝手につけたもの。
Date: 12月16日(木)13時29分 Name 山形浩生
(注:これはこの掲示板の書き込みで、「小野善康教授の議論がわかる本だとなにがありますか」という質問に対して山形が答えたもの。
小野善康の本なら、岩波新書で出ている『景気と経済政策』(だっけな、なんかそんなやつ)がまあ手軽でよいはずです。が、主張を知りたければ、SIGHT の創刊号のインタビューとか、2 号の対談とかを読めばわかります。基本は「お役人様のほうが頭がよくてお金の正しい使い道がわかるんだから、きみたちはだまって税金を払いなさい。それにどうせその税金は、どっかの日本の業者に落ちて民間を潤すのだ(ただしその業者はきみたちではないかも)」ということです。
それ以上だと、とたんにむずかしくなるので、でっかい書店の経済の専門書の棚をいろいろあさるしかないでしょう。
Sun Dec 19 12:39:05 JST 1999
From 小野善康 :
山形浩生さん。SIGHT のホームページで私の本を紹介していただき、ありがとう。SIGHT での山形さん、稲葉さんの書評も楽しんでいます。
ところで、ホームページ上の私の論旨紹介を、少し修正させて下さい。私の主張は、「減税で俺にくれといっても、そのお金を貯め込むだけなら、頭の悪いお役人が無意味な公共事業をするのと同じだよ。だって、失業放置と労働無駄遣いは同じでしょ。それなら、みんなでどう使うか考えて、お役人に積極的に訴えよう。そうすりゃ、雇用機会だって増えるじゃない。」ということです。
Mon Dec 20 23:17:41 JST 1999
From 山形浩生 (hiyori13@alum.mit.edu) :
わぁ、小野さん本人だぁ。で、なるほど。うーん、それはいいんですが、 必ずしもそうは読めないような気がするなあ。それにそれ、ずいぶんムシの いい話ですよね。民間は提案しなさい、そしたら役人が(増税して)そのため のインフラつくったりします、ということでしょう。税金払うだけじゃなくて、 アイデアまで出してやるんですかぁ? 失業が無駄なのはわかるけれど、 それなら民間が自力でいいビジネスを思いついて、自力でそれを実現して 需要もつくり、自力で人を雇うようにします、だからちょっと税金減らして 首がまわるだけの余裕をくださいな、というほうがすっきり していて、まだしも実現性がありそうだと思うんですが。公共事業を通じたほうが それが有効にできるという根拠はないはずです。小野さんのお好きな携帯電話 の事例だって、確か公共投資ではないですよねえ。
そもそも「みんなで提案しましょう」というのは、経済学者 の提言として意味があるのかどうか。民間は収益機会があれば、だまっ てたって「こーしてくれ」と陳情にいくわけでしょう。みんなで提案しましょう というだけでは、長谷川慶太郎の「日本の未来に希望を持って明るい 提言をしていこうではないか」みたいなアホ本とさして変わらない、かけ声で しかないですよね。SIGHT 創刊号でのインタビューみたいに、「金貯め込む やつは守銭奴だ」と罵倒したって、現実に老後に不安を持ってる人や、 ほしいものがない人には意味がないでしょう。「おまえらがケチだから 日本は不景気だ」というなら、経済学者としては、みんながケチでなくなる ための方策ってなんだ、というのを言わないと。
そこでたとえば、PFI みたいなスキームなら民間 が新しい提案をするインセンティブが高まるよ、とか(そんな甘いもんじゃないですけど)、あるいはインフレ期待を高めれば人は金を使うように なるよ、とかいうなら、政策的な提言としては意味があるけれど、 単に役人が金使えるようにアイデア出してあげて、というのでは、民間だって すでにある程度やってることでもあるし、言われても困ってしまう、という ところではないでしょうか。
というような話を含めて、こんど(来年になりますが)hotWIRED Japan に『経済政策の 正しい考え方』のかなりきつい書評を書いたんですが、もしアレでしたら事前に お送りしますんで、反論なり、論点のふかぼりなりをおねがいできればおもしろ いな、と思っているんですが、どんなものでしょう。
Tue Dec 21 10:46:24 JST 1999 From () :(注:名前を入れ忘れているが明らかに小野善康教授)
山形さん:私のお答えは以下の通りです。
ところで、現在社研の所長職で、国立大学設置形態がらみの議論で、てんてこ舞いです。その上、私の不況理論の国際金融への応用編を、岩波新書で執筆中、さらに、ケンブリッジUP で出すことになっており、その上...というわけで、必ずお返事できるかどうかわかりません。済みません。ところで、今までの山形さんのご批判は、「景気と経済政策」を書く時点で予想し、本書中でその回答を書いた、その範囲を超えていないように思います。そのため、あの本をもう一度お読みいただくと助かります。 それにしても、私の理論をたびたび話題にしてくださって、ありがとうございます。
訂正:本論と関係ない訂正ですが、ケンブリッジ UP からの本は、直接投資と産業政策がらみの純理論書で、今回の不況関連とは違いますので念のため。