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ケインズ『雇用と利子とお金の一般理論』要約、序文
山形浩生 (全訳はこちら)
序文
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この本は主に経済学者仲間向けに書かれている。それ以外の人々にも理解できるといいなとは思う。でも本書の第一の目的は、理論上の難しい問題に取り組むことで、その理論を実践に応用するのは二番目の目的でしかない。というのも、正統経済学がダメなのは、論理的一貫性を持たせるべく慎重に構築された上部構造にまちがいがあるからではなくて、その前提に明確さと一般性が欠けているからだ。経済学者たちに、自分の前提を見直してもらうには、きわめて抽象的な議論と強い口調が必須だ。だからチョイ攻撃的な書き方になってるところもあるが、許せ。
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ここで問題になっている話はとっても大事だ。でも、ここではまず身内の経済学者の説得が大事なので、一般人は蚊帳の外だ。
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本書と5年前の「貨幣論」(Treaties on Money) との関係はわかりにくいだろう。前の本はまだ古典理論の影響下にあった。お金それ自体が産出に影響を与えるとは思っていなかったので混乱していた。でも本書では全体としての産出や雇用の規模とそれを変える条件の話をしている。だから本書のは一般理論で、古典理論はその部分的な特殊解というわけだ。
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本書の執筆ではいろんな人にお世話になった。ありがとう。
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本書を書くのは、脱出のための長期にわる苦闘だったし、読者にとってもそうだろう――慣習的な考え方や表現から逃れるための苦闘なのだ。ここでダラダラと述べてあるアイデアは、実はかなり単純だしわかりやすいはずだ。難しいのはみんなが持っている古い考え方から逃れるところなのだ。
J.M.ケインズ
1935年12月13日
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YAMAGATA Hiroo日本語トップ
2011.10.10 YAMAGATA Hiroo (hiyori13@alum.mit.edu)
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