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ケインズ『雇用と利子とお金の一般理論』要約、5 章
山形浩生 (全訳はこちら)
5 章 産出と雇用を決めるものとしての期待
Abstract
- 生産には時間がかかるので、将来についての期待が今の経済活動を左右する。
- 短期期待は、同じ設備での生産量を左右する。長期期待は設備投資を左右する。
- ただし期待は変わるし、反映されるまでに時間がかかるので、現在の設備量は過去の期待変動が積み重なって反映されている。
本文
Section I
- 1. モノを作るには時間がかかる。だから事業者は、作ったものが実際に売られる時点を考え、そのときの市場の将来見通しをもとに、現在の生産をする。
- 2. 期待には二種類ある。短期の期待と長期の期待と。短期は、生産計画に関する期待。長期は投資計画に関する期待だ。
- 3. 日々の生産量は、短期の期待で決まる。設備投資は長期だ。そしてこの期待がそのときの雇用量を決める。後になって実際に売れた量は、雇用には直接的には関係ない。単にその後の期待形成にちょっと影響するだけだ。
- 4. でも期待が雇用を変えるには時間がかかる。
- 5. 期待の水準が同じで時間をかけて安定した雇用は、その期待に対応した長期雇用だ。
- 6. 期待が、雇用を増やすほうに変わったとする。すると事業主は、まずは人手をちょっと増やす。その後、設備投資をして、それにあわせてまた人手を増やし、ちょっとオーバーシュートしてから落ち着いて、安定した長期雇用に達する。その逆もある。
- 7. 実際には、新しい長期雇用になる前に期待がまた変わるので、話はさらにややこしい。
Section II
- 8. ということは、ある時点の雇用は、その時点の期待だけでなく、それ以前の期待にも左右されるってことだ。でも、過去の期待は設備投資に含まれていると考えられる。だから現在の雇用は、現在の設備資本と現在の期待で決まると言える。
- 9. あと、長期の期待は考えるけど、短期は細かいから無視していいはず。短期の期待は、ほとんどが直近の実績に左右されてるんだし。
- 10. ただし、耐久財の場合には、生産者の短期期待は投資家の長期期待に左右されてる。これは直近の実績だけじゃ判断できない。また長期期待は急変する。これは12章で見る。だから長期期待は慎重に考えるべし。
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2011.10.10 YAMAGATA Hiroo (hiyori13@alum.mit.edu)
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