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ケインズ『雇用と利子とお金の一般理論』要約、4 章
山形浩生 (全訳はこちら)
第II巻 :定義と考え方
訳者の説明
この第II巻は、現在ではあまり意味のない部分。当時の経済学で使われていたあいまいな概念などを整理して、考え方のベースとなる数量などを定義している。いまはもう統計データの整備が進み、この『一般理論』で使われている概念が普通になっているので、ここであれこれ批判されている話はまったく問題にならない。だから5章以外はあまり細かく読む必要はない。
- 第 4 章:古典派経済学で当時使われていた概念の批判。
- 第 5 章:事業者は将来の期待に応じてものを作る。短期は既存設備の稼働(生産計画)、長期は設備をどう増やすか(投資計画)となる。長期の期待がだいたい雇用を決める。
- 第 6 章:所得とか貯蓄とか投資について、当時使われていた概念の批判。社旗全体で見れば、貯蓄と投資は必ず等しくなることだけ頭に入れれば十分。
4 章 単位の選び方
Abstract
- この4-7章は、古い概念整理なので本題とちょっとそれる。
- いくつかの概念はあいまいなので使いません。
- 雇用理論を考えるときには、名目の額面価値と、雇用量しか見ません。あと、細かい賃金の格差も無視。みんな同じ一人当たり賃金 (wage-unit) とする。
本文
Section I
- 1. この4-7章は、古い概念整理なので本題とちょっとそれる。
- 2. どういう整理かというと、まず経済全体をきちんとあらわす単位をどう選ぶか、という話、経済分析における期待の役割、所得の定義だ。
Section II
- 3. 経済全体を論じるのに経済学者が使う用語はあいまいすぎてダメ。特に国民配当 (National dividend), 実質資本のストック、一般価格水準というやつ。
- 4. (i) 国民配当というのは実質産出みたいなものだけど、これは直接はかれないのでとってもあいまい。
- 5. (ii) 実質資本のストックも、古い機械と新しい高性能の機械とをどう評価するかという点でかなり問題あり。
- 6. (iii) 一般価格水準というのもずいぶんあいまいだ。
- 7. でも、通常こんなのは純理論的な話で実際にはどうでもいいと思われているし、その通り。定量分析はこういうあいまいな概念を使わずにやるべきだし、それは十分可能だ。
- 8. もちろん、がんばって近似を出してみるのは、それなりにおもしろいだろうけど、でも定量分析の基盤にすべきじゃない。
Section III
- 9. 総需要が増えると思えば事業者は総産出を上げる、というのはつまり総雇用を増やすってことだ。でも経済全体の総産出をはかるのは難しいので、雇用だけを見てやろう。雇用が増えるとその分産出も増える、ということにしよう。
- 10. つまり、雇用の理論では名目の額面価値と、雇用量しか見ません。あと、細かい賃金の格差も無視。みんな同じ一人当たり賃金 (wage-unit) とする。時給に雇用量をかけたら総賃金ね。
- 11. 労働もホントはピンキリだけど、まあ大勢に影響ない。有能な人は一人当たり賃金二人分といった具合に考えよう。
- 12. このほうが厳密に話ができていいのよ。
- 13. 産出の変化も、総労働時間だけ見ればいい。設備の差とか技能の差は無視。
Section IV
- 14. 名目価値と雇用量だけで供給関数は定式化できる。
- 15. そして産業ごとに求めた式を総和して全経済の話もできる。
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