CYZO 2006/9号。表紙は成海璃子 山形道場 復活第 ?? 段

今月の喝! 募金の経費が理解できない人たち。

(『CYZO』2006 年 9 月)

山形浩生

要約: 募金のお金が、募金募集団体の各種経費に使われることを指して「ピンハネ」などと難癖をつけるバカがいるけれど、金集めには経費がかかるくらい常識ではないか。自分の金がすべて被災者に行くと思う発想がそもそも変。黒柳徹子に渡したところで、事情は何も変わらない。



 ぼくは公徳心に富んだ親切な人間なので、でかい災害や戦災があればそこそこの金額を募金することが多い。募金先は、日本赤十字とか、日本ユニセフ協会とか、国境なき医師団とか、そのときの気分とその災害の性質によってあれこれ変わるけれど。しばらく前に仕事ででくわした国連系の某機関のやつがろくでもなかったので、国連系はいまぼくの中で非常に優先順位が低い。その程度のえり好みはある。

 さて、このぼくといえど、世界中のあらゆる災害だの戦災だのを常に把握しているわけじゃないのだ。だからときどき各種の機関がダイレクトメールを送ってきて、ダルフールがまた変なことになっているとか、コンゴでまたどうしたこうした、といった話を教えてくれるのはそれなりにありがたいことだ。それを見て「しょうがねえな、少しまた10万ほど募金でもしてやるか」という気になったりもするわけだ。

 もちろん、こうしたダイレクトメールにはそれなりの費用がかかる。その費用は、ぼくが募金した中からも出ているだろう。家賃を含めた各種の管理費用もいる。でもそれは十分に意味のある費用だ。ぼくはそのダイレクトメールを受け取らなかったら、寄付をしなかっただろうから。費用を使った結果、募金の総額は増え、結果として被災者のところにまわる支援も増大する。よいことです。

 ところがネットを見ていると、こういう仕組みがわからない人がかなりいるようだ。たとえば日本ユニセフ協会についてあれこれ難癖をつけている人のサイトでは、これについて寄付がピンハネされているとか高輪のユニセフハウスが気にくわないとか。日本ユニセフ協会は、ユニセフの窓口として募金を募って、そのうち1割強を活動費用として遣い、残りをユニセフにまわしている。その活動というのは、もっぱら広報だ。その1割強の広報活動があるからこそ、8割強のユニセフ本部への金も生まれている。世の中に一定額の募金があって、そこから上前をはねている、というのとは話がちがう。募金というのは勝手に集まるものじゃない。集める努力をしないと集まらないのだ。オフィスやビルだって、本部の所在地はある程度のステータスにはなるのだ。多額の募金をしようという人は、その相手が信用できるかどうかを見極めたいと思う。変な雑居ビルに間借りしている、いつ夜逃げするやもしれない組織だと募金も集めにくくなる場合も多いのだ。ついでながら、よい職場を提供しないとよい職員も集まらない。せっかく募金したのに経理のミスで行方不明になったらいやじゃないか。

 ちなみにこの人は、黒柳徹子が勝手に開いてる口座に寄付すると「善意の金額が 100% 相手に届くのが明確」だと思ってるようだけど、そんなことないって。「相手」って現地の被災者のつもりだろうけれど、ユニセフにいったお金は、さらにユニセフの自前の広報活動やら、ニューヨークの高給取りの職員たちの給料にもなりますから。日本ユニセフ協会がなくなれば、まったく同じ活動がユニセフ直轄で、たぶんもっと効率悪く行われるだけだ。だからこそ、ユニセフは日本での募金業務の窓口として日本ユニセフ協会にお願いしているわけですな。

 ま、冒頭でちょっと触れた理由で(それとアグネス・チャンや黒柳徹子があまり好きではないので――広報も裏目に出ることはあるわけです)ぼくは最近はユニセフにはあまりお金をあげていない。でも、ある程度募金すると、次回のダイレクトメールには住所名前を印刷したシールを同封してくれたりして、ちょっと便利だったりするので、読者のみなさんも試して見ちゃいかが。確定申告でも税控除できるしね。もちろん、ユニセフでなくったって一向にかまわない。そういうお金は、多少は国内経費として使われるだろう。でもそれは、多くの場合は無駄に消えるわけじゃない。むしろほかの募金の呼び水として使われている種なんだよ。

近況:出すプロポーザルがすべて落選して、なんか呪いでもかかっているのかと思う昨今。ところでゲーム脳のすばらしさをたたえる本を訳しました。


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YAMAGATA Hiroo <hiyori13@alum.mit.edu>
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