CYZO 2005/11号。表紙はまったく似合わない着物姿のMEGUMI 山形道場 復活第 ?? 段

今月の喝! ホワイトバンドの続き。

(『CYZO』2005 年 11 月)

山形浩生



 久々に日本にくると、日本のホワイトバンドってなんか変なことになってるんだねえ。日本のホワイトバンドは、それ自体としては肝心のアフリカにはぜんぜんお金がいかない、という指摘は各方面で見られる。でも、それが目的じゃないからいいんだ、と関係者はいう。もう民間レベルでお金を集めてといった活動ではらちがあかない。政府に対して貧困削減をアピールし、政策的な対応を求めるのが目的なんだという。だから売り上げも、政治活動資金に使われるのであります、というのが日本の関係者の説明だ。

 ふーん。政策的な対応ねえ。そういうからには、いまの政策は貧困削減を考慮していない、とかれらは思ってるわけだ。じゃあ、いまの世界の(または日本の)援助政策って何を目指しているんだろう?

 貧困削減だ。

 貧困削減策って、もうとっくにやってるんだよ。それどころか実は、貧困削減の重視ってのは、いまの世界中のODA政策の根幹だ。もう十年前、前総裁のウォルフェンソンのせいで、世界銀行はとにかくなんでも貧困削減と言い始めた。どんなプロジェクトをやるにも、それは貧困者をどのくらい減らせますか、という話をされる。そして途上国に対しても、貧困削減戦略ペーパーっていう無意味な作文をさせて、学校作ると貧困者が100人減りますとか、無意味な計算をさんざんさせて悦に入ってるんだ。

 そして今の援助は、協調援助ってのがやたらに重視される。一つの国にいろんな援助機関が入り込んでるから、その動きを協調させようってわけ。そうなると、なんとなく世銀さんは一番声がでかいってのもあるし、貧困削減をベースに考えようという話になってくる。おかげで日本をはじめ世界中の各国援助機関も、貧困削減を重視しましょうって話をせざるを得なくなってる。貧困削減にも流派があって、世銀流のが必ずしもいいとは思ってなかったようだけれど、それでも貧困削減に向けての動きはいろいろやってるだよ。

 だから貧困はほっとけないと思うのは、それは結構な話だ。でも、それを政府に訴えられても「いやお説ごもっとも、すでにその方向でいろいろやってるんですが」としか申し上げられないんですけど。もちろん、現在の政策では不十分だ、という批判はあるだろう。でも、もし今よりもっといいやり方を知っているなら、それを教えてよ。実は貧困者の比率は世界的に着実に下がってる。人口が増えてるもんで、絶対数は増え気味だったけど、それも下がってる。それが援助政策のおかげか、というのは疑問だ(実際、援助にできることは本当に少ないんだもん)。でもいまの方向性がまちがってるわけじゃなさそうだ。すると、ホワイトバンドの人たちは何を求めてるの?

 そして前回も書いたように、貧困脱出には時間がかかる。十倍のお金をつっこめば十倍のはやさで減るわけじゃない。ある村が貧困を脱出するには、自分で食べられる以上の作物を作ってそれを売り、そのお金で何かを買う、といったサイクルが必要だ。そのためには、農業を整備し(潅漑して、収量の多い新しい農法を教えて等々)、その産物を取引する商業のお膳立てをし(市場まで運ぶ道路とかね)、儲けた金を一晩で飲んだりせずにちゃんと貯金して計画的に使うように教える――これが一通りできて、やっと貧困脱出だ。何年かかると思う? 甘く見て五年としようか。お金を五倍つっこんでも、これが一年にならないのもわかるでしょう。しかも往々にしてこれが失敗するんだ。

 というわけで、そんなみっともない腕輪をはめたところで、政府としても援助屋としても「はい、おおせの通り粛々と続けます」と言って何も変えないだけなんだけどね。でも、それでいいの? きみたち、何かを変えてほしかったんじゃないの?

近況;アイルランドでスタウト三昧、ウェールズでビター三昧の日々を送った結果、やっぱラガーが一番うまいー、という結論に達しました。

注:貧困者がどんどん減っている点については、以下を参照: http://cruel.org/economist/poverty/salaimartin.html



前号へ 次号へ  『サイゾー』インデックス YAMAGATA Hirooトップに戻る


Valid XHTML 1.0!YAMAGATA Hiroo (hiyori13@alum.mit.edu)