山形道場 復活第 ?? 段
朝日新聞にも書いたネタなのだけれど、最近総務省系で、おたく系コンテンツが国際的な競争力があるから今後それを支援して日本経済の核に据えようとか、あるいは議員立法でアニメ活用促進法を作ろうとか、変な動きがあれこれ出てきている。今アニメだのゲームだのがなにやら元気よさげだし、なんか世界的に評判になっているくさい、だからいまそれに対する支援だのなんだのと言っておけば、勝ち組にすり寄って自分の手柄みたいな顔ができる、というくらいの腹なんだろう。
でも……そもそも政策的な支援をやるなら、いますでに強くて競争力を持っているところを支援したってしょうがないのだ。去年、ノーベル賞をもらった二人に、尻馬で賞をあげてみたり、ナントカ名誉市民にしてみたり、といったみっともない現象がたくさん見られた。それはまあわからなくもない。マイナーな賞としては、かれらを受賞者にすることでその賞自体の知名度があがる、という計算も大きかったはずだ。でも、産業政策ってのはそういうもんじゃない。今はダメでもこれからのびそうな産業や業種を支援して芽を出させる、というのが産業政策の基本でしょう。
そういう「これから」の産業を見つけるのはむずかしい。国主導の産業振興策というのは、世界的に見ても、日本的に見ても、ほとんど成功したためしがないけど、それは公共が無能だからじゃなくて、何が将来的にのびるか、重要になるかなんて、だれにもわからないからなのだ。そしてわかったとしても、多くの場合その産業は自分で勝手にのびて、政府の支援なんか何も役にたたない。そもそも支援がいるというのは、単にもともとモノにならない、ということだったりする。
そしておたく系コンテンツのために政策でどんな支援ができるのか? なんか出ているのを見ると、人材育成に著作権保護? うーむ。実は日本のかつての官僚による産業政策、たとえば傾斜生産や超LSIプロジェクトは、数少ない成功した産業政策の例だとされることが多い。でも、そこでの官僚の役割というのは、実は企業間で情報を横流しすることだった、という説もあるのだ。A社がすごい新機軸をうちだすと、役人はB社を呼びつけてそれを見せて「これを来週までに作れ」と言う。B社は必死でそれを研究して――そして産業全体の技術力が上がった、という説。シリコンバレーが栄えたのも、人の流動性が激しくて企業秘密がダダ漏れで、だから秘密を囲い込むよりどんどん新しい技術革新を追いかけないと生き残れなかったからだ、ともいう。ヘタに著作権を保護しないほうが、実はいい結果になるんじゃないか。これはローレンス・レッシグの主張なんかとも通じる考え方だ。
そしてかれらが支援したがってるコンテンツって何なの? ギャルゲーやロリ萌えコミックは支援してくれるのかな? 無理だろう。エロ漫画が訴えられたら助けてくれるか? 無理だろう。それどころか、政府が手出し口出しするようになったとたん、そういうのはすごい迫害と自主規制にさらされるのは目に見えてる。でも、それがなくておたく系コンテンツが栄えるとは思えない。去年おもしろかった『趣都の誕生』に紹介されていておもしろかったのが、韓国のおたく系コンテンツ振興策。なにやら立派な施設があるんだけれど、そこでは日本のアダルトアニメも見放題! 笑ったけど、そこまでできるのはえらい。ついでにいえば、過去のおたく系コンテンツをきちんと保存する事業もやったほうがいいぞ。でもやんないでしょ。どう考えても、まともな結果を生みそうにないどころか、かえっていろんなものを殺しそうなんですけど。早い話が、一九七〇年代のイギリスが競争力ある産業支援と称してロック活用促進政策を推進してたら、パンクやニューウェーブが生まれたと思う? そういうことだ。
近況:久々に日本に帰ってくると、寒いので驚きました。そうか、長いこと南国にいて忘れていたけれど、これが噂にきく冬というやつなんですねえ。
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