CYZO 2001/04号。表紙は菊川怜だが……なんか顔が、コンパスで描いたみたいな異様な丸さなんですけど。 山形道場 復活第 23 段

「今月の喝! NPOインパク協会」

(『CYZO』2001 年 04 月)

山形浩生



 むかしぼくは、ホットワイアードというオンライン雑誌で、NPO/NGOの話をしたことがある。NPO、つまり非営利組織だ。市民たちが、自分のだいじだと思う活動について利益を省みず、ボランティアにも近い形で実施していこうという活動形態だと思えばいい。これまでは従来の非効率でやる気のない政府のお役所仕事と、ごうつくばりで営利しか追求しない企業活動としかなかったけれど、NPOなら自発的にやりたい人の集まりだから熱心だし効率も高く、利益は考えないからコストも低いはずだ。というわけで、これからの社会を動かす力として、いまこのNPOやNGOの活動が大きく注目されている。

 さて、ぼくはそのホットワイアードの記事でいろんなことを言った。自発的で熱心というのは、効率がいいことではないし(善意のバカってのはいくらでもいるから)、中には思いこみで有害なことをするやつだっているだろう、というのが中心的な議論だったんだけれど、その他の議論の一つが、要するにこのNPOっていうのは、いままでの外郭団体とどこがちがうんだ、ということだった。非営利で、ある程度は公共的な性格を持つ事業をやっていて、さらには政府のエージェント的な活動をして(NPOの活動資金のかなりの部分は、いろんな形での政府からのお金だ)、というNPOっていうのは、要するにいままでの財団とかといっしょじゃないか、と。

 さて、ここに一つのNPOがある。インパク協会 (http://www.inpaku2001.org/)。

 これは何をするところかというと、インパクのキャラクターグッズ(なにそれ)を売ったり、インパクのサイト出展者に対する技術サービスの仲介をしたりする、そういうところだ。技術サービスの仲介って言っても、ジャンル別(翻訳とかウェブページのデザインとか企画立案とか)に請け負う企業が登録してあって、興味ある人は勝手にその登録リストに載ってるところに連絡してくれ、と書いてあるだけだけれど。でもって、委員のメンツもすごいな。理事長がトヨタの奥田会長。JR東日本の会長、孫正義、さらには……例のインパクがらみの委員会のメンツが雁首そろえてる。

 さて、これはちゃんとNPO認定を受けた、文句なしのNPOではある。が。みんながNPOというときに頭に描いているのは、こういうものだろうか? ぼくはちがうと思う。ふつう、人が思っているイメージというのは、なにか正義感なり「やらなきゃ!」という使命感なりにかられた一般市民が自発的に活動をはじめて、というようなものだと思う。一般市民が、インパク応援しなきゃ、と思うか? トヨタの奥田氏が、インパクがらみの委員たちと一念発起して……んなわきゃねーよな。当然、政府がインパクを盛り上げるような外郭団体をつくんなきゃと思って、作ったんだろうと予想されるわけだ。するとさ、やっぱNPOって、いままでの外郭団体といっしょだ。

 いままでなら、財団か三セクが作られただろう。でもいま、外郭団体への締め付けは厳しくなってる。多くの財団や三セクは、官僚の天下り先確保のためという存在意義しかなくて、赤字垂れ流しでまともなことを何一つやっていない。そこへ出てきたのがこのNPOという仕組みなわけだ。

 たぶん、今後この手のNPOはいやが上にも増えるだろうね。もちろん、すべてのNPOがこういうのだとは言わないけれど、でも相当部分はこういう疑似外郭団体になって、多くの財団と同じことになるだろう。このインパク協会も、たぶんインパクが終わってからも、自己目的化して生き延びることだろう。なんせここの正式名称は、インターネット文化振興協会で、設立趣旨はインターネット時代の文化振興とインターネット普及だ。口実ならいくらでも見つかりそうだもの。でも、NPO法って、こんなことのためにできたんだっけ、とぼくは思うのだ。まあ大した実害はないとはいえ……

近況:カゼがなおりきらないまま、アメリカとチュニジアをまわってヘロヘロで、しかもありとあらゆる締め切りが重なって死にそうです。



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