CYZO 2000/02号表紙は内山理名。……だれ、この子? 山形道場 復活第 9 段

ポスト 2000 年問題

(『CYZO』2000 年 02 月)

山形浩生



 これが出る頃にはもう片づいているであろうか。執筆時点では、2000 年問題が秒読みに入っている状態で、世の中いたずらに民草の不安をあおるような雑誌記事ばかりが横行していてまことに嘆かわしい限りである。あるいは実際にどっかで大惨事が起こったりしちゃっているであろうか。断水、停電、各地で工場大混乱。絶望と恐怖にかられた人民が、各地で大暴動を展開し、機動隊と衝突。すさんだ人々の心の隙につけこんでカルトが跳梁跋扈(これはまあ今もやってるな)。楽しみといえば楽しみ。

 しかしながら、2000 年問題が去年から今年にかけて、コンピュータ業界にかなりの特需をもたらしていたのは事実。 CERT の報告だと、1月1日をすぎても、2 月末が次の山で(というのも 2000 年は特殊な閏年で、まちがえてるプログラムが結構あるようだから)、まあそこまではこの特需もなんとか続く。

 問題はその後だ。

 2000 年特需で動かしていたプログラマ群が、かなり余るだろう、と言われている。まあそりゃ余るだろう。で、公共系や大企業系の大きなシステムは、まあそこそこできちゃってる。これから大きな変更もないし、新規受注もジリ貧だ。2000 年特需は、古いシステムの古いソフトをほじくるだけの単純作業だから、古参兵でも使えた。もうそういう仕事はあまり見込めない。

 どうしよう。

 どうにかしよう。

 というわけで、実はコンピュータ業界がかなり派手な陳情というかなんというかを政府筋に繰り広げているという噂が流れている。が、その噂とは別に、思いつきを述べてみよう。いやこれは別にその噂とはまったく関係ない、山形一人の思いつきだよ。

 デノミをする、なんて手があるかもしれない。いや、これはその電算業界の陳情とは何のつながりもないアイデアなんだけどぉ。

 コンピュータ業界としてはありがたい限り。確実に仕事が入ってくるし、ちょっと桁を動かすだけの単純作業だから、COBOL しか知らない(実はそれすらろくに知らない)、使えない老いぼれソフト屋でもこなせる。しかも影響されるソフトは無数にある。需要増大で、景気の下支えにもなるではないの。ここで指をくわえてプログラマの大量失業を見過ごしてよいものだろうか。そんな事態になれば、下手をするとせっかく(会計操作も含めて)上向きだしたかに見える景気はたちまち失速。平成不況脱出の旗手たる小渕首相が、そんな事態を手をこまねいて看過してよいものでしょうか。

 もちろんデノミなんて、実はただの会計操作で本質には何の関係もない。だから実はやっても何の意味もない。バカな人は、通貨にゼロが多いと国威にかかわるとか言うんだけれど、そんなつまらんものに支えられてる国威なんかいらねーよぅ、とは思う。デノミをすると、むかしの感覚でお金を使ってしまって「しまったぁ!」という人が出るから景気が上向くとかいう、なんかあまりに人を馬鹿にしてるとしか思えないことを言う人もときどきいて、なんとかならんものか、とは思う。しかしまあ、いろいろメンドーだ、ということをのぞけば実害はなにもないといえばない。ねえ小渕さん。そろそろあなたも退路を考える時期。ここは一つ、最後にデノミに一花咲かせて喝采の中で後任にバトンを渡すということでいかがでしょう!

 ……とおだてられると、小渕くんはすっかりその気になって、すでに関係各方面に根回しなんかはじめちゃったりしてるとおもしろいなー、とは思う。もちろんそんなことはないだろうけど。だってそうなったら、せっかくこさえる 2000 円札がずいぶんと短命で終わっちゃってかわいそうじゃない? 小渕くんもそんな殺生なことはすまいと思うんだけど。いやもちろん、これはすべてぼくの頭の中の妄想でしかないんだけどね。


近況:しかし個人的には、NIN 来日問題のほうがよっぽど大きな問題なのだ。変な出張、入るなよー。あと『新教養主義宣言』(晶文社)がえらく好評。みんなえらくあっさりだまされてくれます。



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