CYZO 2000/01号表紙は釈由美子。信じられないほどブスに撮られている。あごが弱いのが、口元の力のなさできわだって無惨。 山形道場 復活第 8 段

オンライン株ばくち

(『CYZO』2000 年 01 月)

山形浩生



 この雑誌がどこに向かおうとしているのかは知らないけれど、ぼくはここで勧められていることにかなりの不安を感じざるを得ない。ぼくが言っているのは、ここで行われているオンライン投資万々歳の各種記事だ。

 特にあの女の子2人にオンライン・トレードをさせている連載がある。ぼくは前号のあの記事を読んで、本当に唖然とした。この 2 人は、とりあえずなじみのある株と言うことで、ディズニー株を買っているけれど、それがどんどん値下がりしていて、しかも為替差損まで出てきて、少々損を出していた。

 そこへデイ・トレーダーの人が出てきて、ディズニー株はずっと下降気味のダメな株だから、そもそも買うべきじゃなくて、さらに 8 月に一回上がっているからそのとき処分すればよかったんだ、という「指導」をしているんだ。

 確かに株価推移のグラフを見ると、なるほどディズニー株はウルウルと 8 月に一回上がって、その後またジリ貧トレンドを続けている。うん、この 8 月に上がったピークのところで売ればよかった、なるほどな、という気がする。さすがプロのデイトレーダーだ、と思ってしまいそうになる。

 でもそれは、ディズニー株がまたジリ貧に戻る、というのを知っているいまになって初めて言えることだ。その上がっている 8 月の時点では、それが一時的な現象なのか、それともそれが長期的な現象なのかは、株価を見ているだけじゃわからなかったはずなんだ。

 たとえばその周辺の動きを見てみると、ディズニー株は小刻みに上下を繰り返しながら、長期的にはジリ貧だ。さて、今日はちょっと上がったかもしれない。2 日続けて上がることだってあるだろう。さあどうする。一定の目標リターンを決めておいて、そこまで上がったら欲張らずにさっさと売れ、という「セオリー」が紹介されていた。でも、株がその目標リターンまで上がってくれるかどうかなんて、株価を見ているだけではわかりっこない。目標リターンを 15% にして、株価が上がって 14% のところまできた。さあどうする。わからないだろう。いつか円安で、1 ドル 140 円台になったときに、150 円まできたら手持ちのドルを売ろうと思っていた人を何人か知っている。結局そこまでいかずにドルは下がってしまったんだけれど、でもその時点ではそんなことはわからない。「欲張らずに140円台で売っておけば」というのは、後になってから初めてわかるんだ。そうだろう。

 下がっているからダメ株、上がったからいい株、というのは後から見ればそうだろう。あとから見れば、「このとき売っておけばよかった」と言うのは簡単だ。でもそれは、iMacが出るまでにアップル株を買っていれば、とか東通工時代にソニーの株を買っておけば、というのとおなじことだ。この人のも含め、最近デイ・トレーダーの戦略とか称する本がいっぱい出ているけれどお、どれを見てもこの手の後付けの岡目八目みたいな議論が得意げに並んでいて、うんざりさせられる。いまは株式市場が日本もアメリカも上り調子だから、その手のインチキ「セオリー」でも、平均では儲かったりすることもある。でもそれは別に、そのセオリーが正しいということではないんだよ。

 だからぼくはとても不安だ。あの女の子たちは、いったいこれから何をさせられるんだろう。だってこの調子だと、よくても無意味なセオリーをいっぱい教え込まれて、結局何も得ることなく、一時的にあぶく銭を稼ぐだけで終わるだけだもの。下手をするとレバレッジをかけろとか言われて、借金までさせられちゃって、ボロボロになって終わるんだろうか。それはそれで、反面教師としてはおもしろいかもしれない。ただしそのときに、道連れになっちゃった読者があんまりいないといいな、とは思う。気をつけてね。そういうばくちをするなら、半分なくしてもいいお金の範囲にとどめてね。ぼくはそう思う。さて、今月はいったいどんなことが奨められているだろうか。楽しみだっと。


近況:こうしてベトナムにいる間に初単行本が出ているはずだけれど、どんな本になっているか楽しみ。インドネシアから無事帰れますように。



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