CYZO 1999/07号表紙は山口紗弥加。 山形道場 復活第 2 段

お値段 その 1

(『CYZO』1999 年 07 月)

山形浩生



 経済学のいちばん最初の授業では、たいがい「需要供給があってその交点でお値段が決まるんだよー」というのが出てきて、まあみんなそれで納得してるわけだけれど、でも最近どうもぼくはこの値段ってやつがよくわかんなくなってきてしまったので、そういう話をするのだ。

 というわけで地価ってのがある。土地のお値段ですな。で、マスコミで地価が何年続落だの底入れだの言うとき、これはたいがい国土庁の発表する公示地価ってやつの話をしているのだ。これの上下でみんな大騒ぎして、また下がったから景気回復は遠いとか、でも下がり幅が小さいから景気回復は近いとか、きいたふうなことを言うのだ。

 さて、この公示地価ってのがどう決まってるかというと、いくつか全国にチェックポイントがあって、そこを鑑定士さんに見せて「ここっていくらくらいでしょうねえ」とやるわけ。で、鑑定士さんは何をするかというと、そのまわりでなんか取引なかった? というのを不動産屋さんにきいて、あそこがいくらならここはこんなもんかな、というのを見積もるわけだ。

 でもじゃあ、いまみたいにあんまり取引がなかったら? うん、そうしたら、まあ景気悪いから去年よりちょっと下がってるだろう、えいやっ! てな感じで八掛け、とかしちゃうらしい。いま鑑定をあげちゃうと、ほかが下がってるのに目立っちってやだから、みんなまわりの顔色うかがって、まあ無難に下げとくんだってさ。

 そして取引があるときでも、取引の当事者がどうやって値段を決めるかというと、実はいいものさしがない。まわりでいっぱい取引があれば相場がわかるけど、それがないもんね。で、いちばんよくあるのが、それぞれの土地には税金の計算に使う路線価ってのがあって、まあそれがなんとなく公式チックだし根拠ありげなので、じゃあ路線価くらいで、というのがみんなの納得する線なのだ。で、それでみんな取引する。

 ところが、だ。知らない人は知らないんだけれど、この路線価っていうのは、実は公示地価の 8 割くらいにしとけ、というのが決まってるんだよ。これは条例だか通達だか決まりだかがあんの。だからほぼ自動的にその水準になる。

 すると、次回の公示地価はなんだかんだいってその路線価あたりが目安になって、その路線価は前の公示地価の 8 割ってことで決まって、それを目安に次の公示地価が決まって……となると、このままいけば地価はどんどん下がるしかないのね。わははは。

 しかしちょっと待て、みんなこんな代物に大騒ぎしてんの?(そうです) バカじゃない?(かもね) 適当に八掛けとかえらくいい加減じゃないの?(はいはい) やっぱその土地がどれくらい役にたつかとか、使いものになるかとか、そういうのを考慮したほんとうの価値ってのがあるはずじゃないか、と思うのは人情、だよね。

 で、まさにそういう考え方で理屈をこねたのが、どっかで見たことあるかもしれないけど、収益還元地価って代物。が、これも実は……という話を、また今度する。


近況: 二年がかりの Linux 参考書をこないだようやくベータ脱稿したが、しかし今年の富士ロックフェスはどうしよう。カタトニア。うーん、ATR。うーん。微妙なところで悩む。



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YAMAGATA Hiroo <hiyori13@alum.mit.edu>