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CUT インデックス #1

 むかしむかし、うちに電話がかかってきて妹が出て、いきなり「えーっっ! 渋谷陽一さんですかぁ?!」と絶叫して、すごくあせった顔で電話をとりついでくれたのがことの起こりだったっけ。ぼくも妹も、渋谷陽一のサウンドストリートで音楽系の基礎教養を身につけたので、ファンでしたもの。
 その後、編集長も担当も変わったけど、基本方針は変わらない。なんでもありの何でも書いてよし。

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1991.02 山下洋輔『ドラバダ門』、チュツオーラ『ブッシュ・オブ・ゴースツ』

 最初にオファーがきて、わ、どうしよう、どんなの書こう、といろいろ迷って 鎌倉市役所にヒアリングに行って、その帰りに公衆電話からなんか「二本くらいかいて好きなほうを選んでいただくっつーことで」てな空約束をしたけれど、結局これ一本になってしまった。最後に落とそうとしているあたりがかわいいような気もする。

1991.04 ドナルド・バーセルミ「パラダイス」

 イスラエル爆撃の記述に、渋谷陽一がかなり気を使っていた。もともとはもうチトイスラエルざまみろ的な記述が多かった。
 さてこの「……さ」 というのは未だに頭にくるし、一向にやむ気配をみせない。ちょっとしばいがかった言い回し(しばいは書き言葉の世界にとらわれているので、これを平気で使う)以外でこの言い方をする人も、見たことがない。女の「XXXじゃなくてよ」というのも、書き言葉では使うけれど、現実にはきいたことがない。
 こういうのを使うやつは、結局は自分の耳を使うのをさぼって、頭でっかちに文を作ってるだけだと思う。だって自分でちょっと口のなかでころがしてごらんよ。絶対不自然で言えないから。粉砕する。

1991.06 井上章一「つくられた桂離宮神話」、村上龍「コックサッカーブルース」

 これはかなり気に入ってもらえたし、自分でもなかなか嫌味な揚げ足取りができた満足行く回。井上章一はいいよなー。でも「美人論」はあんまり評価してない。

高野豊「root から / へのメッセージ」

 この連載を開始したときには「どんな本を採りあげてもいい」と言われたから、「よーし、それじゃマンガとビジネス書と科学書とポルノと、とにかくおよそこの種のトレンディ雑誌には載らない代物をやってやる」と思った。だって、世の中の書評って、どこ見ても同じ本ばっかしやってんだもん。で、今回は科学技術系の本ができて、すごく満足だし、言いたいこともしっかり言えたし、これを読んで SF 研の先輩の金子のぶお氏は、「おまえがああ書くから買った」とのこと。書評の正しいありかただと思う。

1991.08 ワインバーグ 「コンサルタントの秘密」

 これは名著だけれど、まだちょっとぎこちない書き方しかできていない。なお、掲載時には、ぼくの本職について編集部註がついた。

1991.10 「白島靖代写真集」大室幹雄「寅さんがたばこを吸わない理由」

 ぼくの書いた歴代の文の中で最低のものの一つ。白島靖代はむちゃくちゃ趣味なんだけど(ぼくは背が高い美女に弱いのだ)、大した写真集ではなかったのだ。大室のこの本も、かれの著書としては最悪のものの一つで、とりあげるべきじゃなかったんだ。それをうじうじつっつきまわして、しかもなんか照れてるんだよね。ろくでもない文になっちゃった。ごめんなさい。でも、白島靖代は、イマイチ鳴かずとばずだなぁ。「女優霊」は悪くはなかったけど。

1991.12 藤幡正樹 「Forbidden Fruits」

 「ヘザース」を観て感動しまくってる頃で、ついでに「ハドソン・ホーク」を観て大絶賛状態。なんであれがヒットしないのか、ぼくにはわからん。藤幡のこの本もすげーと思った。藤幡については、四方幸子と意見が分かれてて、彼女は藤幡ってのはむしろ古い美学の残党だ、という見方をしてるそうな。ふーん、そうかな。

1992.02 「BLITZ」、シド・ミード「クロノログ」

 このときは、確かツインピークス座談会もあって、カールスモーキー石井とホイチョイの馬場さんと渋谷陽一とで座談会をしたんだ。で、撮影に使って余ったドーナツをもらって、そのまま仕事に戻って差し入れにした。でも、なんで BLITZ はつぶれたのかなあ。あと、これだけ誉めたのにバンダイはクロノログ II の案内すらよこさず、結局買い損ねてしまった。許せーん。

1992.04 バラード「クラッシュ」、エリクソン「ルビコン・ビーチ」

 これもあんまりよくない回。とりあげた本はよかったんだけど、まったくキレの悪い文。頭のところの下司な勘ぐりが何の役にもたってないのが最悪。

1992.06 エドワード・ベア「裕仁天皇」

 このときは渋谷陽一がえらく気を使った。このネタはやばいから、ちょっとでも茶化したような部分はまかりならん、山形も夜道には気をつけるように、と脅かされたのを真に受けて、この時期はいつでも逃げられるように外貨とパスポートをいつも持ち歩いてた。
 蛇足ながら本の見返しに引用されてる部分はちょっとまちがい。「マッカーサーは裕仁を生まれながらの天皇と思っていたが」と書いてあるんだけど、ちがうのね。マッカーサーは、「裕仁なんて、たまたま生まれついた家のせいで天皇になっただけじゃん、能力や中身なんかないんだろ」と思ってたんだ。それが、予想外に紳士的な人物が出てきて驚いたって話。

1992.08 金塚貞文「オナニスト宣言」

 この数回、非常に低調な回が続いていて、この回のさいそくでは渋谷陽一が「最近全然ダメ。もっとキャッチーで売れ線を頼みますよ!」とかなりきついおしかりもいただいた。で、なにかうだうだ書きかけてて、全然まとまらずに、六本木の青山ブックセンターに遊びにいって、これを買ってきて、帰りの電車の中で読んであまりのおもしろさにとまらず、そのまま感想文を一挙に書き上げた。渋谷せんせいのおおぼえきわめてうるわしく、ほとんど起死回生の一回。

1992.10 キャシー・アッカー『血みどろ臓物ハイスクール』、ルー・リード歌詞集

 これまではずっとこのコラムは二段組で、だから今回は、二冊とりあげてそれが左右できれいにすっぱり分かれてる、という文にしようと思った。で、いっしょうけんめい字数をあわせたら、この回から三段組になって、苦労が水の泡。

1992.12 村上龍『イビサ』、槇文彦『記憶の形象』

 出張ついでに長崎オランダ村にいって書いた。宇都がいっしょだったな。あいつは手癖の悪いやつで、ここのホテルのガウンをがめていったような。で、この原稿の締切があって、質流れで買った J3100GT をかついでいったんだが、いやあ重かったのなんの。キーボードはすごくよかったし、プラズマディスプレイも見やすかったんだけれどね。

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