連載第?回
(また例によって投資のお金がらみの話なので、例によって香港のジェニファー先生のお出ましを願っております)
JC: おっす。まったく、香港の景気もアレで商売あがったりよ。で、なによ、こないだの本(『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』)の続き? 『ゴミ投資家のためのインターネット株式投資入門』(メディアワークス)、だとぉ? あたしの言ったこと読んでないのか! 株なんかゴミ投資家のやることじゃないと言っただろう!
――(そんなワタクシに言われましても)いや、一応読んではいるみたいで、ほめたところは広告に引用されてるけどね。
JC: ふん、まあいいや。んでもって、ほうほう、まずは堅実に財務諸表から入って、理屈はちゃんとおさえようとしてるみたいね、ふんふん………
(沈黙)
なにこれ。ひどいわね。EPS より株価が高いのが Q 型企業でこれが「荒井拓也モデル」? こんなのファイナンスの二回目の講義で習う、ただの PVGO じゃないの。こんなもんに自分の名前をつけるなんて、いいツラの皮だこと。EVA 革命? EBIT で企業評価するのの、どこが革命よ。いまのファイナンスの常識よ。(あ、ごめんね、知らない人には意味不明かな。いずれ山形にまともな本書かせるからさ)。通俗本の受け売りしてるひまに、まともなファイナンスの教科書読めばいいのに。え、日本にはないの? じゃあおまえが訳せよ。何してんだよまったく。
――(ごめん、やりたいんだけど……)で、後のほうではトンデモ入ってくるし。
JC: 波動(笑)。「世界の本質は波だ! 超ひも理論でも、万物は波である。だから下がった株価もいずれ上がる!」ギャハハハ。株価上下の波と、超ひも理論や素粒子物理学の波とをいっしょにするなっつーの。ぜんぜんちがう概念なんだから。バカ丸出し。で、だめ押しで「気功など東洋の世界観でもすべては波です」(失笑)。
まったく、これがシリーズ4作目? 2 作目『税金天国』は、多少いいことも書いてあるけど、まあそこそこ。次が「海外ファンド入門」か。これはあたしの言うことちゃんときいたらしき、まともな本ね。前半のいろんなファンド分析なんか、正しいなあ。これが書けるのはすごい。これはいい本。これは是非とも買いなさい。でもこの「インターネット株式」はねぇ。
――まちがいはある?
JC: 経済学がらみの話は、気に入らないな。まちがってるとまでは言わんが。会社が総資本コストを上回る高リターン投資をすればいいのだ、というのもちがうなあ。そしたら高リスク投資をバンバンしろってこと? んなわけねーだろ。それをやったバブルの末路をごらんなさいよ。
それとさあ、株のお値段が合理的に形成されるというのと、それが適正だってのはまったく別の話よ。その説明なしに「正しい株価が合理的に求まる」なんて誤解のもとを書かないでほしいな。みんな合理的にまちがえることだってあるんだから。
まあ実害はない、のかな。最初のほうの、荒井ナントカモデルだって、恥知らずだけれど、どんな教科書にも書いてあることでまちがっちゃいない。でもねぇ。
――じゃあやっぱ、オンライン株式投資なんかおすすめしないわけね。
JC: もちろん。絶対およし。特にアメリカ株の売買なんかすすめてるでしょう。あなたがアメリカ株のなにを知ってるの? ファンドマネージャたちよりいい判断ができると思うの? アメリカ企業の多くは、アメリカ国内を市場としてる。あなた、アメリカの市場がわかる? わかんないでしょ。こんなPERだのEBITだの、数字だけいじった「指標」なんかで株価が見切れると思いなさんな。 ところがこの本は、たまにそれを言いつつも、すぐに指標のお遊びに入っていって、それでなにか株価が読みきれるかのような書き方になってる。でもその程度のことは、みんなやってるの。それで儲けられれば苦労しないわよ。
――じゃあ、いいところは?
JC: この税金がらみの話はなかなかいいんじゃない? これは勉強になるな。こういう具体的な手続きと実践の話になると、このシリーズはすごく強い。問題は理論よ。それと、そもそもの志。
――志、ですか。
JC: うん。結局、この人たちのしたいことってなんだったのかしら。最初の本では、ビッグバンの恩恵もない、金利も低くて運用機会も限られているというところで、苦肉の策でオフショア銀行が出てきた。それはわかる。もしこの人たちの究極の目的が、生活防衛ならね。税制がゆがんでるとか、国の景気策がとか言うのも、自分の将来の生活がなりたたないという怒りなら、よっくわかるのだ。
でも目的がちがうみたいね。この人たちは単に、手元の小金で機関投資家もどきのことをしていい気になりたいわけだ。チマチマ小金をためようとしてた連中が、株式投資で一儲けですって? 笑わせるんじゃないわよ。ま、なくしてもいいお金なら、こういう火遊びもいいんだけどね。
――そんなよけいな金を持ってないのがゴミ投資家、だったはずだよね。
JC: そうそう。ゴミ投資家の初心を忘れたの? しかも最後は「ゴミ投資家を卒業」ですと。バカね、はっきり言って。オンライン取り引きしたくらいで、懐具合は昔のままのくせに分不相応に気分とプライドだけ大きくなっちゃって。貧乏人が背伸びするとろくなことないわよ。志ってそういうことよ。タイトル変えたら? ゴミ投資家じゃない、この本はすでに、ゴミ投機家の本になり下がってる。
――リスクの説明もあまりないよな。
JC: うんうん。この本はずるくて「株にリスクはある」「投資リスクは自己負担」と書いて、それを免罪符にどんどんリスクの高いほうに話をふる。次はアメリカ株投資だってさ。ふん、その次は? デリバティブ投資でもする? 先物? 「リスク」ってわかってるのかな。一個人はどのくらいリスクをとれるの? どう考えればいいの? それを説明しないで「リスクは自分で」と唱えて意味があるの?
だいたい株に手を出す前に、ゴミ投資家として望ましい投資って株なの? その検討がない。具体的にはさ、株をやるのと家を買うのとどっちがいいの? 家は税制優遇もあるし、住めるし、マジにいいかもよ。『税金天国入門』で、基本的な生活インフラとして不動産と生命保険を考えたいって書いてるじゃない。これよこれ。これを追求しろよ。だからいま本当に必要なのは、『ゴミ投資家の生活設計入門』なんだけれど、でもこの人たちの指向では、永遠に書かれそうにないな。残念。日本の夜明けはやっぱ遠い、かもね。
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