「月へ行きたいんだ。おれ、リスからヒッチハイクしてきたんだよ」 「おやおや。長かったろうな。何という船に乗っているんだねp・」 「知ら荏い。そううまくターミナルでただ乗りできると思うかい亨・貨物船の発着場をあたって みる方がよさそうだな」 「なるほど、ただ乗りするつもりならね。だけど、アルフレヅドがやってこなかったら、きみが 彼の旅券を使っても多分かまわないだろうな。やっこさんはもう二隻も船に乗り損なっているか らね。だいたい自分でもどうして彼を待ってここで立ち往生しているのかわからんよ。わたした ちがいっしょに行く計画を立てたということ以外には」 「月へかい?」 「その通り」 「そりゃあ一しめた」ジョーが顔を輝かせていった。「彼がこなければいいんだがー」 彼はいいよどんだ。「これはシンプレヅクスな考え方だよねF」 「真実はいつでもマルチブレックスだよ」とオスカーがいった. 「そう。彼女もそういった」 「昼間きみといた御婦人のことかねP」 ジョーは頷いた。 60 「ところで、彼女は誰なのかねP」 「サン・セヴェリナだよ」 「その名前は聞いたことがあるな。銀河系のこんな渦状肢で彼女は何をしているのかねP」 「ルルを少し買ったんだよ。彼女にはしなくちゃいけない仕事があったから」 「ルルを買ったって、ええP ところが彼女はきみに旅券代としてびた一文渡さなかったという のかねP 月旅行料金の百五十クレジットぐらいはどうにでも融通できると誰しも思うのに」 「いや、彼女はとても気前のいい人だよ」とジ目ー.「それに彼女はルルを買ったんだから、彼 女のことを悪くとってはいけないんだq彼らを所有ずることは、とてもとても悲しいことなんだ から」 「わたしがルルを買えるほどの金を持っていたとしても」とオスカー。・「どうということはない. そう、何もわたしを悲しませはしない。ルルを少しだって茸 いったい彼女は何匹買ったんだ ね子」 「七匹さ」 オスカーが額に手をあてて、ヒューと口笛を鳴らした。「しかもその値段賦等比級数的に増加 する! 二匹買うには、一匹を買う四倍の金がかかるのは知ってるだろう。それでも彼女はびた 一文くれなかったんだね章」 - 6[ ー ジョーは再び舐いた。 「信じられん。そんな話は今まで聞いたことがない。彼女がどれほど途方もなく富裕でなければ ならないか、きみにもわかるだろうP・」 ジョーは首を横に振った。 -きみはあまり聡明ではないんだねP」 「おれがどれだけかかるのか舐かなかったから、彼女も教えなかったんだ。おれは彼女の船の単 なる宇宙船ゴ巨だったんだからね」 「宇宙船ゴロ評・刺激的な響きがあるね。わたしもきみぐらいの歳には、いつもそんなことをし てみたいと思っていたんだ。だが、度胸がなかったんだな」でっぷりと太った男は、突然落ち着 かなげな表情を浮かべてターミナル内を見回した。「ああ、アルフレヅドはやってきそうもない な。彼の旅券を使いなさい。受付に行って要求すればいいだけだから」 「でもおれはアルフレッドの身分証明をするようなものは何も持っていないんだよ」とジョー. 「アルフレッドは身分証明書など持っていたためしがない。いつで竜財布やそんな類のものを失 くしてしまうんだよ。わたしが彼の予約をとってやる時はいつでも、彼が何ら身分証明に相当す るものを持っていないことを条件にしている.だから、きみはただアルフレッド・A・ダグラス だといえばいい。それで旅券はもらえるから。さあ、急いで」 「うん、わかった」彼は人々の間を通り抜けて、」事務員のところに行った。 「すみません」と彼はいった.「A・ダグラスの旅券はありますかP」 受付の事務員はひとわたり名簿に目を通した。「ええ。ちゃんと載ってますよ」ジョーに向か ってにやりと笑う。「地球では相当お楽しみなさったようですね」 「はあP」 「この旅券は三日もあなたを待っていたんですよ」 「ああ」とジ目1。「いや.ちょっとごたごたがあってね、それが治まるまで両親に会いたくな■ かったんだよ」 事務員は頷き、片眼をつぶってみせた。「これがあなたの旅券です」 [ありがとう」そういって、ジョーはオ.スカーのところに戻った日 「次の便はちょうど今乗船中だ」オスカーがいった吐「さ膨、行こう。やっこさんは別の方法で 来るしかないだろうよ」 船上でジョーは尋ねた。「AでかぶつVがまだ月にいるか知ってるP」 「そう頭いたいね。わたしの聞いたところでは、彼はどこにも行かないらしいし」 「見つけるのは難しいと思うかいP」 「そうは思わないね。それにしても窓の外は美しい眺めではないかねP」 月のターミナルから出た時も、オスカーはまた別の卑役な話を事細かに喋っていた。頭上一マ イルのところで円弧を描いているプラスチドームを、陽光が三日月形に明るく縁どっている。彼 らの右手では月の山脈が大きく湾曲しており、背後には緑色のポーカーチップのような地球が天 にかかっている。 突如、誰かが叫んだ。「あそこにいるぞ!」 女性が悲鳴をあげ、後じさりした。 「つかまえろ!」別の誰かが叫ぶ寧 「いったいぜん……」オスカーがまくしたてようとした。 ジョーはあたりを見回し、習慣的に左手をあげた。だが鉤爪はない.連中は四人-一人は後 ろ、一人は前、そして両横に一人ずつ.身をかわしたはずみに、オスカーにどんと突きあたる。 するとオ界力1はバラバラになってしまった。その破片が、彼の足の周りをぐるぐると回ってい る。 周りを見回すと、ほかの四人の男も爆発した。そのぶんぶんとうるさく飛び回る破片は、彼の 周りを回って取り囲み、その包囲を狭め、他の下船者たちの当惑した顔をぼやかした。と、突然 その全部が合体し、彼は恐ろしい暗黒の中に閉じ込められた。意気温喪しかけた寸前、彼に一条 の光明が差し込んできた。 「ポシー-」誰かが甲高い声をあげた。「ボシー・…:ー-」 ジョーはひどく小さな部屋のバブル・チェアに降ろされた。その部屋は動いているように思え たが、はっきりそうとはいいきれなかった。もとオスカーだった声がいった。「エイプリル・フ ールだ。驚いたかね」 、 「くそっ!」ジョーは叫んで立ちあがった。「いったいどうなってんだーどうなってるんだp」 「エイプリル・フールだ」その声は繰り返していった。「わたしの誕生日でもある。きみは混乱 しているようだなロでもすっかり度胆を抜かれたわけではないんだろ亨」 「死ぬほどこわかったぞ。これはどういうごとだp おまえは誰なんだp」 「わたしは<でかぶつ>」と<でかぶつ>がいった。「きみは知ってると思ってたんだがな一 「何を知ってるって音」 「オスカーやアルフレ善やボシーなんかの役割をだよ(枇窮製鯛難縣君鴛齢舞劣鑓楠)。 ともに楽しんでくれているものと思っていた」 「何を楽しめっていうんだ韋・おれはどこにいるんだP・」 「もちろん、月だよ。ぎみがここに来るのにそれが賢明な方法だと思ったんでね。サン・セヴ.エ リナはきみの料金を払ってくれなかった。彼女はわたしがしてくれるだろうと考えたのだ。それ で、わたし藻その勘定をたてかえたんだから、少しは楽しませてもらわなければ割に合わない。 ぴんとこなかったかね戸」 「何が来るってP」 「ただの言い回しだよ。よくやることなんだ」 「そうかい、次回は気をつけておくよ。ところで、きみは何者なんだP」 「どこにでも存在する言語マルチ・ブレックスだ。きみにとってはくでかぶつVだよ」 「一種のコンピュータなのP」 「うーむ。まあ、そんなところだ襟」 「それで、これからどうなるんだいP」 「きみはわたしに相談するだろう」とくでかぶつV。「そしてわたしが手助けをする」 「おお」とジヨー。 バブル・チェアの後ろからくすくす笑いがして、ディクが姿を見せ、ジョーの前に坐ると、非 難するように彼を見た。 「おれをどこへ連れて行ってるんだい韋亡 「わたしの中央コンソールへだ。そこで休養しながら計画を立てればよい。坐ってくつろいだら どうかね。三、四分もすれば着くから」 66 ジョーは坐り直した。が、くつろげなかった。それで、オカリナを取り出し、前面の壁にドア が開くまで吹き続けた。 「さあさあ、到着だ、その日の」うちに帰れるとはね」と<でかぶつ>がいった。「入ってくれな いか〜」 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 68 「おれは」ーコンソールにケープを投げつけるー「こうしちゃ」ーガラス壁に小物袋を投 げつけるー「いられないんだー」最後はディクへの飛び蹴り。だが、ディクが身をかわしたの で、ジョーは危うく転びそうになった。 「誰がきみの邪魔をしているんだね吾」<でかぶつ>が尋ねた。 「くそっ、きみじゃないか」ジョーが」獄った。「なあ.おれはもうここに三週間もいるんだぜ。 きみは、おれが出て行こうとずるたびに、あのえんえん九時間もの馬麗馬鹿しい話し合いをして、 それですっかり為れをくたびれさせてしまうんだ」彼は広間を横切ってケープを拾いあげた。 「その通り、おれはまぬけだよ。でも、どうしてきみはそんなことを繰り返して楽しむんだ亨 」おれは未開惑星出身のノープレックス注んだから、仕方がないこと⊥ 「きみはノープレックスじゃない」とくでかぶつV。「きみのものの見方はもう完全なコンプレ ックスだーー⊥自いシンプレックス観に対するわからなくもないノスタルジアを、まだたくさん抱 えてはいるがね。時々きみはそれを議論にも持ち出そうとする。あの時、 即見かけ上の現在∬ る人にとっての現在が,他人にとつては過 )の理解を阻んでいる心理要因をわれわれが議諭していた時も、 ともなPうるような,各白のま観的現在o きみが頑固にー」 「いや、ちがう、きみは間違ってるー」とジョー。「おれは別のものになるつもりなどないんだ」 そのとき彼は広間の反対側に転がった小物袋を拾っていた。 「おれは出て行く。ディク、行こう ぜ」 「きみは」と普通より威厳をこめてくでかぶつVがいった。「愚かになりつつある」 「そう、おれはシンブレックスだ。今でもそのままなのさ」 「知識とプレックスに相関関係はない」 「きみが四日間かけて動かし方を教えてくれた宇宙船もある」ジョーはガラス壁の向こうを指さ していった。「おれがここにきたその晩に、催眠記憶でおれの頭ん中に道筋も植えつけてくれて いる。いったいぜんたい何減おれを止めているというんだ帚」 「何もきみを止めてはいない」と<でかぶつ>が答えた。 「だから、そういう考えを念頭から追 い出せば、きみは落ち着いてこのことをじっくりと考えられるのに」 岬 、 腹をたてたジョーは.チェック・ランプやプ目グラ寿修正用キイボードが点減する、六十フィ ートものマイクロリンクやロジヅク・ブロックの壁に面と向かった。「<でかぶつ>、おれはこ ごが好きだ。きみは友だちとしては偉大だ、実際、そうなんだ.しかも、食い物も運動も全部与 えられている。だけど、おれは気が狂いそうなんだ。このままきみを残して出て行くのがたやす いことだとでも思ってるのかいP」 「そう感情的になりなさんな」と<でかぶつ>。「わたしはその手の処理向きに作られていない んだから」 「宇宙船ゴロをやめてから、今までの人生のどの時期よりも、おれが仕事をしていないことをき みは知ってるかい乳」 「きみはまたどの時期よりも変わったのだ」 「なあ、<でかぶつ>、わかろうとしてくれよ」彼はケープを落としてコンソールに戻った。そ れはマホガニー製の大机だった。彼は椅子を引き出すと、その下に這い込み、膝を抱いた。「<で かぶつ>、」きみが理解しているとは思わない。だから、聞いてくれ。きみはここにいながらにし て.銀羽系のこの渦状肢中のすべての図書館や博物館とつながっている。きみにはまたたくさん の友人もいる、サン・セヴェリずのような人やいつもきみのところに立ち寄っていく人たちだ。 きみは本を書き、音楽を作り、絵を描く。だけど、図書館もないし、テレシアターも一軒だけで、 土曜甘の晩に酔っ払う以外にずることがなく、四人ほどしか大学に行ったことのある者はおらず、 金、儲けにあくせくしていてきみが会うこともないような人々がいて、誰もが誰の仕事のことも知 っている、そんな小さな単一生産社会にいたら、きみは幸せでいられたと思うかいP」 「いや」 「でもおれはそうだったんだよ、<でかぶつV」 「では、どうしてきみは出てきたんだP」 「そりゃあ、伝言のせいで、それにおれの知らないものがたくさんあると思ったからだ。おれに 出て行く用意ができていたとは思わないがね。とにかく、そこじゃきみは幸せではいられない。 だがおれはいられた。ことはそれほど単純だけど、きみが充分に理解しているとはとても思えな いんだ」 「わたしはしているよ」とくでかぶ」つV。「きみがそういうところで幸せでおってくれたらと思 う。なぜなら宇宙はほとんどそんなところばかりだからだ。きみはそういうところで人生の大半 を過ごすことになっていたのだから、そこを楽しめなかったら、むしろ悲しいごとになっただろ う」 ディグが机の下を覗き込み、ジョーの膝に飛びのってきた。机の下は常時十度も暖かく、温血 動物のデノクとジョーにとっては、別々であれいっしょであれ、何度となく潜り込んだ素敵な場 所なのである. 77 「今度はきみが聞く番だ」<でかぶつ>がいった。 ジョーは机の側面に瑛をもたせかけた。ディクが膝から飛び出していき、すぐにプラスチック 製の小物袋を引きずって戻ってきた。ジョーはそれむ開けてオカリナを取り出した。 「わたしのいいたいことは.もうほとんどきみに話している。だがきみには」わたしに尋ねること があるはずだ。きみはまだほとんど質悶していないからね。きみがわたしのことを知っているよ りもずっと、わたしはきみのことを知っている。そしてわれわれが友人ならーそれはきみにと ってもわたしにとっても非常に大切なことだーこういう状態は改めるべきなのだ」 ジョーはオカリナを降ろした。「その通りだー<でかぶつ>.抽れはきみのことを知らなさ すぎる。きみはどこの出身起んだい?」 「わたしは、瀕死のルルがその遊離していく意識を収納するために作ったもの雇のだ」 「ルルだってヂ」ジョーが訊く。 「彼らのこピを忘れかけていたのかねP」 「いや、そうじゃない」 「つまり、わたしの音胆識はルルの意識なんだ」 「だけどきみはおれを悲しくさせないぜ」 「わたしは半分ルルで半分機械だ。だから保護はされていないのだ」 「きみがルルだってp」ジョーは信じられないとでもいうように再び訳いた。「全然思いもしな かったなあ。でもそれをおれにいったからといって、それでどういう違いがあるというんだいP」 「まあ、そういうことだな」と<でかぶつ>。「だが、きみがきみの親友のことをいいだしたら、 わたしはきみを尊敬しはしないからね」 「おれの親友がどうしたってp」とジ目ー。 「また別の言い回しだよ.わからなくてもいいんだ」 「<でかぶつ>、どうしておれたちはいっしょに行かないんだい?」突然ジョーがいいだした。 「おれは出発するーそう決心したんだ。どうしていっしょに来ないんだ亨」 「いい考えだ。きみがそういうとは思っていなかった。とにかぐ、それがここから出て行く唯一 の方法なのだpむろんわれわれの向かう星域はルルの解放にひどく敵対的だ。そこはもう帝国の 直轄領なのだから。彼らはルルを保護しており、その保護に背を向けて、ひと聖白由のままでい ようとすると、彼らにかなりの動揺を引き起こす。彼らのすることには相当むごいものがあると いう話だからね」 「じゃあ、訊いてくるやつがいたら、きみはただのコンピュータだといえぱいいさ。だって.お れもきみがいわなければわからなかったもの」 ' 「わたしはいうつもりなどない」<でかぶつ>がきっぱりといった。 「なら・きみ警ンピ・ータだと掛袈雲ひ矩蓬。耄崇けようや。・んな.三。てた穹 臥間もここにいなくち・奮葎。また議論姦めて・みたいだからな」彼は机の下か島て、 ドアに向かった。 「コメヅトP」 ジョーは立ち止青・肩ごしに督弩た。「何だaまさか気が変わ。たという乍レやな いだろうねp・」 、わたしがー正直にいお 「い雫ちがうよ・もちろ釘たしは行くつもりだ.募-・-つ青 うー晋をのそのそと誉てたら、『おや、ど・にでも暮する言日婁掌.プレ。ク。があ そこを賛ている』と天急本当にい・・と思うかaそし・ルルだと憲わ蕉だろうかヱ 「おれが何かいうとしたら、そういうだろうな」 「わ弩た・ジ下ナル鬱まで甕曹乗・て行けばいい。そ・で四+分後に会お〜 麹が耄た品の襞平肇卵形宇宙船に向かって誓ジ・ム警ディク喉査で追 いかけていった。 讐瞥は麦董の努ま・たちまち・うちに襞運…く全器止嵩流。。、。あ る・そこまで行けは馨集製腎よる損傷を恐れずに太陽委後にできるわけだ。 そこには、各辺組十マイルの巨大なプラスチック厚板があり、その上には建物と大気と、そし ていくつかの娯楽区域が設けられていた。ジョーは船を横町に停め、冷え冷えとした大気の中に 踏み出た。 広揚では兵士たちが隊形訓練を行なっていた。 「何であんなことをしているんだい韋」近くで休憩している制服姿の男に尋ねてみた。 「あれは帝国軍の野戦旅団だ。二、三日中には出ていくよ。ここには長くいないから」 「おれは別に文旬をいってるわけじゃない」とジョー。「ただ興味があるだけなのさ」 「そうかい」とその兵士はいっただけで、それ以上何もいってくれ稜かった. 「どこへ行くんだいP」しばらくしてジョーが訊いた。 「あのな」しつこい子供を相手にずるように、兵士はジョーの方を向いていった。「帝国軍のこ とは、じかに見れること以外すべて秘密なんだ.連中がどこへ行こうとおまえには関係ないんだ から、そんなことは忘れちまいな。もし関係あるというんなら、ナクター王子に許可をもらって からにしてくれ」 「ナクターって亨」ジョーが訊く。 「あの」入だ」兵士は歩兵小隊を指揮している色の黒い山羊髭の男を指さした. hおれにはあまり関係ないんだよ」とジョー。 75 兵吉愛想っかしの視馨送ると・立ち上がり、歩き去った。黒のケ歩蛮たちのきびきび声 した方向転換に合わせて翻る。 そのとき・見物会間にどよめきが起〜た。空覧上げ、蓼さし、響して喋り始める。 広場に票・てきりもみ降下してくるそれは、太髪誓隠し、姿に大きくなってい。た。 それはほ霊方体とい・てよく、しかもー巨大であ・午;の面寛えると別の票見え なくなる・突然シーはそいつの大きさを知・た。各辺がゆうに四分の一マイルはあ。たのだ。 それは姦にぶちあたり・ジーや兵隊たち客そして高い翳を;なぎ倒した。大混乱が 起こり・サイレンが鳴り響き、人寡その物体の周りで右往左往した。. ジーはその方に駆笛した・低努のおかげでかなり速くそ・にた葺着けた。その区馨 中心に・広場に笑きな裂け暴数本弩てい・.その一妻跳び越えた時には、下に暴旻 た。 .r」 憂のんで反対催降りると、少し歩要緩めた。その物体は変くり返るあ急のゼリーで 鷲れていた・そ・ゼーには・・賀覚・があるように受蒙・.麦はわからなか。た。 その暖か霧気をあげている袈をずかして、彼の方に向いた物体の票ぎフスでできているの 賛分けられた・そしてその奥に、冥麦の薄明かりにぼんやりと、マイク。リンクや.ジッ ク・ブロックが、チェック・ランプのかすかなきらめきが見える。 「しいいっ」ゼリーに押し殺された襟じみのある声が聞こえてきた。「わたしは注意をひか松い ようにしているんだ」 今ではもう兵士たちが近づいてきていた。「とにかく、いったいあいつは何なんだい亨」と一 人がいった。 「あれはどこにでも存在ずる言語マルチ・ブレックスだ」と別の兵士が答えた。 尋ねた兵士は頭をかきながら.その壁の大きさをじろじろと眺めた。「地獄みたいにどこにで も存在するってんだな?」 璽人目の兵士は広場の裂け目を調べていた。「こいつを直すにはあのくそったれのルルを使わ なくちゃならんと思うかいp」 <でかぶつVが小声でいった。「連中の一人にわたしに画と向かって何かいってみろといって やってくれ。 一人だけでいいー」 「ああ、黙って」とジョー。「でないとおれの娘と結婚させないそ」 「それがどういう意味か知ってるのかね?」 「単なる言い回しさ」とジョー.「先週きみが居眠りしてる間に少し読書したんだよ」 「おもしろい、非常におもしろい」とくでかぶつV。 77 兵±たちが立ち去り始めた。「ルルなんて手に入るもんか」とその一人が耳をかきながらいっ た。「これは兵隊の仕事だよ。とにかくおれたちが全部直して回らなくちゃならんのさ。だけど、 近くにくそったれのルルでもいたらなあ」 <でかぶつ>のチェック・ランプ藻いくつかゼリーの奥で色を変えた。 「いったいきみを覆ってるそれは何なんだいP」ジョーが後ろにさがりながら尋ねた. 「わたしの宇宙船だよ」と<でかぶつ>。「有機宇宙船を使っているんだ。わたしのように生命 のないものにとっでは.すごぐ快適なものなんだよ。今までにごラいうものを見たことはないの かねF」 「そうーいやー リスであった。それでトリトヴィアンやら何やかやがやってきたんだ」 「おかしいな」と<でかぶつ>。「彼らは普通有機宇宙船を使わないんだが襟。特に生命がない というわげではないんだからね」 コンピュ.ータの周りには大ぜいの入々が集まってきていた。サイレンも近づいてくる。 「ここから出よう」ジョーがいった回「きみは大丈夫なのかい章」 「夫丈夫だ」とくでかぶつV。「ただ広場の方が心配だな」 [血まみれだけど降参はしていない」とジョー。「これも言い回しだよ。先に行ってくれ、タン タマウントで会おう」 「わかった」とくでかぶつV。「後ろへさがってくれ。離陸する」 ぶっぶつという音、そしてすさまじい吸い込み、ジョーが風の中でよろめく。再び人々が叫び 声をあげた。 場面は変わってジョーの船。ディクが前足で頭をおさえて、ダヅシュボードの下に隠れている。 ジョーが離陸ボタンを押すと、巨ボ乗組員があとを引き継いだ。広場の混乱が眼下になる。超静 止空間状態に目を通し、そして彼は跳躍の合図を送った. 静止空間発生機が除ウ、船が超静止空間に滑り込み始めた。ところが、滑り込みを終える前に、 船は急に傾き、彼は激しくダヅシュボードに叩きつけられた.手首が衝撃を受け、はずみをくら って彼はふっとぶ.ディクが金切り声をあげる。 「進行方向に気をつけていなさい」スビーカーから声がした。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 10 ジョーは下唇に食い込んだ犬歯を引きはがした。 「きみはチェスをやらないのかね」声が続く。「わたしの駒の上に駒を置いたら、わたしのは盤 面から出るに出られ猿いじゃないか。以後、気をつけなさい」 「ううううーん」ジョーが口をこすりながら除った。 「誰に対してもだよ」 ジョーは頭を振り、感知ヘルメットをかぶった。古いジャップのような匂い。水圧機に押しつ ぶされる金屑のような音。だが見た目には美しかった。 傾斜路館、花のように開いた建物に弧を描いて続いている。細い金属の尖塔がその天辺に突き 出しており、もろそうな監視ドームが細い鉄柱に支えられている。 「外に出てわれわれに与えた損傷を調べてくれたまえ」 :il 「ああ」ジョーはいった。「わかった。確かに」 エア戸ソクに行き、それを開けようとした時、警告灯が点いたままなのに彼は気付いた。「お い」彼はインターコムで呼びたてた。 「外には空気がないそ」 「きみが用意するものとばかり思っていた」と声が答えた。「ちょっと待ちたまえ」警告灯が消 える。 「ありがとう」そういうと、ジョーは開閉レバーを引いた。「ところで、きみは何者なんだい?」 エア回ックの外では、白いうわっばりを着た禿けかけの男が、傾斜路を降りてきていた。「き みが衝突しかけたのは、測量調査ステーションだよ、お若いの」本人の生の声はひどく小さかっ」 た。「この空気が漏れ出てしまう前に、力場の中に入った方がいい。とにかくいったいきみはど ういうつもりだったのかねF」 「静止空間跳躍をしかけていたんだよ、タンタマウントに向かって。おれシンブレヅクスだった かな?」男は肩をすくめ、ジョーを連れて傾斜路を戻り始めた。 「わたしはそういう判断はしないんだ」と男がいった。「それよりきみの専門をいいなさい」 「おれにはそんなものはない、こともないな」 男が眉をひそめた阜「総合家は今ずぐには必要としていない。彼らはきわめて長命だからな」 「ブライアジルの栽培と貯蔵のことなら、おれは何でも知ってるんだけど」とジョー。 81 男はほほえんだ。「おまり必要ではないな。今は国げ門から国げ壁ずまでの百六十七項目を一冊 にまとめているところなんでね」 「一般的な言葉でいえばジャップ臼罫も)というんだ」とジョー。 男は優しく彼にほほえんだ。「旨ならまだまだずっと先のことだ。きみがあと五、六百年生き ているんなら、きみの申し出を採用できるんだ沸ね」 「ありがとう」ジョーはいった。「でもおれの方が忘れちまってるよ」 「それはよかった」男が彼を振り返っていった。 「さようなら」 「それで、おれの船め方σ損傷はどうなんだp・きみは調べさせてく粗ないのかい? だいいち. きみがこんなところにいるなんて知らなかったんだから。おれはこの進路上に障害がないことを 調ぺていたんだぜ」 尋但老よ」とその紳士はいった。「まず第一に、われわれには優先権がある。第二に、きみは仕 事を欲しがづているのでなければ、われわれの空気を無駄使いしてわれわれの親切を乱用してい る。そして第三に、われわれは生物学、人間の項昌で扱う事前研究に着手しているーきみがこ れ以上わたしの手を煩わすのなら、わたしはきみを標本として細かく切り刻むからな。まさかど ば思うなよ」 「おれの伝言はどうなるんだp・」ジョーはい弓た。「おれはルルに関する伝言をエンパイア・ス 8z ターに持っていかなくちゃならない。しかもそれは重要なんだ。だからこそ、こうしてきみにぶ ・つかることになったんだ」 男の顔に敵意があらわれた。 「結局」彼は平静にいった.「われわれがわれわれの計画をやり遂げれば、その充分な知識から、 建設はルルがいなくてもすませられるようになり、ルルは経済上非実用的となることだろう回き みがルルに与したいんなら、わたしは即刻きみを分断してやる。父は今アデノイドを研究してい るし、二頭歯にも研究の余地が多分にある。われわれは最近結腸にとりかかったばかりで、十ニ デイナム 指腸はいまだまったく謎のままという状況だ。きみが伝言を伝えたいのなら.ここで伝えれぱい い」 「でもおれはそれが何なのか知らないんだ!」そういいながらジョーは力場の際に後じさった. 「おれはもう行った方がよさそうだ」 「きみのようなそういう問題のためにコンピュータ離あるのだ」と男。「やめろ、われわれの空 気を肺いっぱいに吸い込むな」そういうと、ジョーに向かって突進してきた。 ジョーがその突進を簡単にかわす。 力場は通行可能で、彼は頭をさげて通り抜けた。船のエア回ヅクに跳び込むと同時に、ドアを ぴしゃりと閉ざす。警告灯が一秒とたたぬうちに点灯ずる。 1" -- 彼は船を逆進にし、自動パイロヅトが今なお静止空間流をうまく制御し、さらに深い静止空間 レベルまで移行できるよう頴った。少々荒っぼかったが、うまくいった。測量調査ステーション が、ダヅシュボードの正面に置いた感知ヘルメットの視覚板から次第に薄れていく。 タンタマゥントの軌道上で<でかぶつ>はたやすく見つかった。そこは氷結したメタンの惑星 で、火山活動が激しく、地表には絶えず亀裂が走り、爆発を繰り返している。灼熱の白色矮星の 一人娘であり、ここから眺めると、それが二つの眼のように見えた。 一つは宝石のように輝き、 もう一つは銀灰色で夜闇をうかがっている。 「<でかぶつ>、おれは故郷に帰りたい。リスに戻って、すべてを忘れちまいたい」 「いったいどうしてp己コンピュ「タの疑うような声がインターコムごしに聞こえてきた。ジョ kは肘をついて、むっつりとオカリナを眺めている。 「マルチプレックス宇宙が気にくわないんだ.好きになれ荏いんだ。だからおれはそれから逃げ 出したい。今おれがコンプレヅグスな・のなら、あまりにひどい、間違ってる。リスに戻ったら、 シンプレックスになろうと一生懸命にやってみるつもりだ。本当にそうするつも』なんだから」 「いったいどうしたんだねP」 , , 「おれはただ人々が好きになれないんだ.そんなに単純なことなのさ章きみは測量調査ステーシ 騨。 「洗あ、知っている。彼らに出会ったのかね?」 」「そう」 「それは不運だったな。そう、で」ルチプレヅクス宇宙には処理しなければならない悲しいことが あるんだよ。その一つがシンブレックスなのだ」 「シンプレックスがP」ジョーが訊いた。「どういう出曇恥でP」 「きみがマルチプレヅクスのヴィジョンを相当会得していたことに感謝するんだね。そうでなか ったら、とうていきみは生きて彼らから脱れられなかったろう。わたしはシンプレヅクスな生物 期。 が彼らに出会わした話を聞いたことがある。彼らは戻ってこなかった」 「彼らもシンプレックスなのかP」 榊,, 「おお、そうだよ。わからなかったのかねP」 「だけど彼らはあらゆる知識を編纂している。それに彼ちの住んでいるところはー美しい。彼 らが愚かなはずがない、それを造ったんだから」 塀」 「まず第一に、ほとんどの測量調査ステ」ションはルルが造ったものだ。第二に、今凛でに何度・ もいったように、知性とプレックスは必ずしも同じものではない」 ■ 騨」「でもそんなご、がおれに。,し。わかると。,.だ茸」 ,窃 「その証拠をあげてもきみの気分を害することはなかろう。彼らはきみに〓つでも質間をしたか ねp」 「いや」 「それがまず一つの証拠だ、決定的なものではないがね.彼らのいったことから考えて、彼らは きみを正しく判断していたかねp」 「いや。彼らはおれが仕事を捜していると思っていた」 「ということは、彼らは質問をすべきだったということだ。マルチブレックス意識は質問の必要 がある時は必ず質問をするのだから」 「思い出した」ジョーがオカリナを置いていった。「シャローナ蘇そのことを説明しようとして た時、彼女はこの世で一番大切なものは何かとおれに訊いた。彼らに同じことを訊いたとしたら、 彼らがどう答えるかおれにはわかるような気がする。あのとんでもない辞書、それとも百科事典 か.どうせそんなものだ」 「その通り。その質問に無関係な答えができる者は誰でもシンプレックスなのだ」 「おれはジャヅプと答えた」ジョーが懐しそうにいう。 「彼らは宇宙の全知識をカタログにしようとしている」 「それはジャップより大切なことだ、おれはそう思う」とジョー. 「コンプレックスな観点からでは、多分そうだろう。だが、マルチプレックスな観点からでは、 どちらも似たようなものなのだ。だいいち、それはかなり困難な仕事だ.わたしが最後に聞いた 時には.彼らはすでにBの項まで進んでいたから.きっとぎp器田壁蟹墨§禺亀誤のことは記載 していないはずだ」 「何だ……ええ、きみは何といったんだP」 「これは、相対論的見地から力学モーメントを算出したまず閲違いのない決定的な数値のやや複 雑な集合の名称だ。わたしは数年前までその研究をしていた」 「そんな言葉は聞いたことがないな」 「わたしがつけたんだよ。しかしその意柴するものはまったく本当のことなんだし、充分〓項目 阻」 をさく価値はある。彼らにそれが理解できるとは思えないがね.だがこれからは、それに対して 監匡壁陣室器器印甚罫弓登禺の名をわたしは使うし、今やわれわれ二人渉その言葉を知っているわけ だから、それは有効なのだ」 「当は得ているようだ」 「それに、あらゆる知識を、しかもずぐに利用できる知識をもカタ回グにしてしまうのは……そ う、それにふさわLい唯一の言葉はシンプレックスなのだ」 、」 「どうしてp亡 " 「誰でも必要なことを矩ることができるし、ー誰でも知りたいことを知ることができる。しかし、 誰もが知りたいことずべてを知る必要は、それが測量調査ステーションのやっていることなんだ が、結局意味がなく.まとまりを欠くことになる。ところできみの船はどうしたん起ね?」。 「これも測量調査ステーションさ。衝突したんだ」 「あまりよい状態じゃないな」 「離陸が少しばかり荒っぽかったんだよ」 「まったくもってよい状態とはいえんな。特にわれわれがどれほど遠くまで行かなければ検らな いかを考えると。どうだい、こちらに乗り移っていっしょに旅をすaというのは? この有機宇 ー占 宙船は美しいし、わたしも離着陸時にはもう少しうまく操船するから」 「着陸時におれの背骨を折らないと約束ずるならね」 「約束ずる」とくでかぶつVはいった。「わたしがきみに迫いつくから、きみは船を左旋回させ なさい。そうすればそのおんぼろ船をそのままの位置においておける」 船が接舷した。 「ジョー」柔軟な管がエアロックに接蜘されると、<でかぶつVがいった。「きみが本当に帰り たいのなら、まだ帰ることはできる。しかし、戻ることが進むことより難しい地点に来ているの も確かだ。きみは特殊な教育を相当受けている。ナン・セヴェリナやわたしが教えたものだけで 1 1:F -.1 .なく、きみはリスでも学んでいたのだ」 ジョーは管状通路に踏み込んだ。「おれは今でも故郷に帰りたい」コンソール・ルームに向か う歩度が遅くなる。「<でかぶつV、たとえきみがシンプレックスであったとしても.きみは時 々自分自身に向かって、わたしは誰か帚 と間うてみるんだろうな。わかってる、測量調査ステ ーションがシンプレックスだといってくれるのは。それで少しは気が安まるがね。でも、おれは 今だにジャップ農場に戻って、野性のケパードと闘いたがってるごく普通の子供なんだよ。それ がおれなんだ。それがおれの知ってることなんだ」 「たとえ帰ったとしても、きみは周りの人々を測量調査ステーションの連中と同じように感じる ことだろう。きみは故郷を去ったのだよ、ジョー、なぜならきみは幸せじゃなかったからだ。そ うじゃないのかねP」 ジョーはコンソール・ルームまでやってきたが.そこで立ち止まり、両手をドア枠にかけた。 「くそっ、その通りだ。ちゃんと覚えてるよ。おれは違ってると思ってたんだ。だから、伝言が やってきた時、それがおれの特異性の証左だと思ったんだ。ほかには何もなかったからな。わか るま炉さ、<でかぶつW」ードア枠に手をかけたまま前に身をのりだすー「おれが実際に特 異だと知ってたならー確億してたかどうかのことだーおれは調査ステーションなんにかそれ ほど驚かなかったさー でもおれは人生の大半を徒費し、不幸せで、また平几でもあったようだ」