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山形の著書訳書など

 われながらいっぱいやってるなあ。なるべく全文をアップするようにはするけれど、ゲラ段階での赤字は当然ながら反映されていない。ぼくは一発オッケーの人だから、ゲラはほとんどいじらない。だから大きな差は出ないけれど。むしろ、ゲラの段階で編集者から一部表現(および罵倒)を削除されることが多いので、ここにあるほうが「あるべき姿」っつーかなんとゆーか。

著書いろいろ      訳書さまざま


著書

要するに(河出文庫, 2008)

 『山形道場』と似た構成ではありますが一応別物とはなっております。不労所得万歳。

暴走する「地球温暖化」論―洗脳・煽動・歪曲の数々(文藝春秋, 2007)

 渡辺正との対談が出ているだけ。本来、著者として名を連ねるのはおこがましいんだが、著者の数が7人になったほうが、七人の侍みたいでかっこいいから、と言われて名を連ねております。

新教養としてのパソコン入門(アスキー新書, 2007)

 かつての本の新書化。不労所得万歳。ただし最終章の著作権のところは削った。あと、文字コードの直しのところで、時事ネタのオリンピックやマドンナのねたを削ったが、いまにして思えば残した方がよかったかなあ。内容は当然ながらほぼ同じ。

新教養主義宣言(河出文庫, 2007)

 処女作の文庫化。不労所得万歳。読み直して、なおすところがほとんどないのには我ながら驚愕。新しい追加その他はほとんどありません(一本だけ追加、あとは文庫あとがきのみ)。また、宮崎哲弥に解説をご快諾いただきましてとてもうれしゅうございます。

『「かわいい」の進化生物社会論』(2007)

 うーむ、本腰を入れて書かなくては。

新しい教科書:コンピュータ(監修、プチグラパブリッシング、2006)
Slashing Ideas
 監修といいますが執筆陣がみんなぼくよりえらい人ばかりで呆然としております。ゲラの段階ではじめて他の人の原稿を見るが、かなり注文をつける。うーん、大丈夫かな。怒らないでくれるといいんだけど。(9/13)
 特にもめることもなく、無事出ました。イベントとかもやって、なかなか楽しゅうございました。実質稼働一週間くらいかな。みんなおもしろい原稿を書いてくれて、ありがとうございました。

『非モデュラの群がるサイバネの野の果て(仮題)』(2002)

 これはできるかなあ。ほとんど自分を追いつめるために書いておくけど、ホントにおまえこれ書くの>自分?

『血も涙もない冷血ファイナンス入門(仮題)』(2003)

 例のファイナンス講座です。こんどこそとりかかりました。

たかがバロウズ本。(大村書店、2003) サポートページ 全文
Slashing Ideas
 完成いたしました。スゲー本だと思う一方で、だれにも理解できないだろうという悲しみもあり、結構複雑な思いでございます。やっぱすごく分厚くなるみたい。これで 3,000 円以下に抑えるというのは、至難の技ではないかと……(2002/10)。
 でも、わかるやつはわかる。わからんやつはやっぱわからないけど。その反応もなかなかおもしろかった一冊。あと、全文公開してあるけど、印刷できないのね。だから落ち着いて読みたい人は本を買いましょう。

集客(六耀社、2003)

 森田企画編集、山形が文とインタビュー、ハイナー・シリングが写真という、どっかで見たチーム。もちろん、文やインタビューは山形以外もいっぱいやってるし、写真もハイナーだけじゃないけど。乃村工芸社創業110周年記念、だったかな。なかなかおもしろい仕事ではありました。本業で都市開発系をやんなくなって久しかったし、あちこちデベロッパーさんのヒアリングにまわるのは懐かしい感じ。文は、六六開発本と結構かぶってる。

『新教養としてのコンピュータ;コンピュータのきもち』(アスキー、2002)

How to be a Computer Nerd  『アスキー・ドット・PC』に連載していたのを単行本化。初めてのパターンだけど、結構楽だね。おまけにちょうど訳していた『コモンズ』の中身に触れた章と、あとがき、その他を加筆。ずいぶんと好評で、あちこちでレビューやインタビューが出たのは嬉しかった。
 あともう一つ嬉しかったのが、文中に登場する天才の友人である吉川がこれを見て連絡をくれたこと。かれはその後、Prolog の続きをずっとやって、人工知能っぽいことを相変わらずやっていたみたい。Interlog という言語を作ったそうな。これの評価自体はぼくにはわからん。おもしろそうだが、かなり大風呂敷でもあるし。ところで、この Interlog 本だが、1,300 円だと Amazon の送料無料にならない。もし今後、オンライン書店が普及してきたとき、これはひょっとしたら本の値ツケに影響するかも。1,300 円の本を一冊買うより、1,500 円の本を一冊買う方がトータルで安上がりなんだもの。

『New Tokyo Life Style Think Zone』(森稔 と共著、装丁はブルース・マウ、2001)

New Tokyo Life Style Think Zone  2000 年末に、いきなり「書け」と言われて書いた。東京の問題はなんで、今後どういうことをしてかなきゃいけないか、というような話。もともと森ビルの六本木六丁目開発の PR パンフみたいなものを考えていたけれど、もっと大きな東京全体についての視点が欲しい、下心見え見えのコピーまみれじゃいやだ、という声があがって、開発のインフォメーションセンターを作って都市に関する提案を行うと同時に、もっと発信力のある本を作りたい、という。そんならやろうじゃないか、ということでやった。でもさんざん遅れて迷惑をかけました。
 なんでぼくに声がかかったかというと、これを担当した森アートセンター(こんどの開発のてっぺんにできる美術館みたいなもの)の人がコマンド N のイベントに時々きてて、その時に名前をおぼえられていたのと、あと編集担当がもと鹿島出版会の森田さんだったから、ということ。何が幸いするか、世の中わからん。
 いま見直してみると、うーん、装丁の感じに比べて、文が少しゆるすぎたかも。もうちょっと引き締めたほうがよかった。また、ブルース・マウは日本語のレイアウトの感覚はつかめていない。このため、日本人が見ると妙に字間が開きすぎていて、テキスト部分に関する限り散漫なレイアウトに見える。これは残念ではある。ただ、この本は英語版もできるのだ。そっちのできがどうなるかのほうが楽しみ。
 なお、ブルース・マウのコンセプトでこしらえたそのインフォメーションセンター「ZONE」は、とりあえず箱ができた段階だけれど、高速道路の橋桁をレンズ状の窓でゆがませて積極的に見せていて、なかなかおもしろいのである。
付記:その後、ブルース・マウはなんか六六開発からフェーズアウト。一部関係者とそりがあわなかった、というようなことらしいのだ。(2002/11)

『山形道場』イーストプレス、2001)
山形道場
 なんか急にいろいろ話が……
と言ってる間に出ちまいました。個人的には、焦点がぼけているかな、という気はしなくもない。「新教養主義宣言」でかなりめちゃくちゃな文章をいろいろ集めたあとなので、こんどはもっとしぼった本のほうがいいな、という感じだったから、社会経済関連のを中心にと思ったんだけれど、実際には連載の山形道場もテーマがいろいろだったし、「浅田の壺」の話なんかも入れるうちにちょっとしぼれなくなった。それをなんかまとまりつけようとして書いた序文も、まとまりきらず。でも、この手の文って、優柔不断な部分があとから見ると妙に深みがあるように読めたりするから、最終的なアレはわからないけど。

『Linux 日本語環境』(Craig Oda, Stephen Turnbul, Rob Bickelと共著、オライリー、2000 年 6 月) サポートページ
Linux Japanese
 あやしい本。日本語利用についての本なのに、どうして著者のうち日本人がおれ一人なのじゃ。難産の末に書き上げたはいいが、中身を吟味しすぎて古くなってて RedHat4.2 や TurboLinux 1.4/3.0 の話とかしてて、必死でアップデートするうちにむきになって、ありとあらゆるソフトを自分でコンパイルしないと気がすまない人のためのマニアックな本になってしまった。あと、コミュニティ重視。できるだけ、開発者をちゃんとクレジットするのが方針。これまでの本はその点いい加減すぎて、フリーソフトがそこらに生えてるみたいな書き方だもの。
 付記:ubuntu を入れたのを機に久々に見直したが、執筆から 7 年もたつと、もう当然ながらかなり古びていて、歴史的価値しかないなあ。もちろんすべて自分でコンパイルしたい人はまだ多少使える部分があるかもしれないが。でも出た当時はよい本だったな、とわれながら思う。共著者たちはいまは何をしているのかなあ。(2007/8)

『Entropic Forest』(Heiner Schiling と共著、2000)

 これまたアレです。でも、出版社の状況がいろいろつらいようで、だから通常の意味での単行本としては出ないかも。2000 年 6 月前半に、横浜美術館とヨコハマポートサイドギャラリーでハイナー・シリング展をやるので、そのときのカタログとしては刊行されるんだけど。まあしゃあない、かなぁ。
 というわけで、2000 年に出ました。なかなかかっこいい仕上がりでわたくしは満足。ただし、結局鹿島出版会からの刊行は見送られて、カタログとしての販売のみ。だから入手先が限られている。ハイナー・シリングもかなり喜んでいました。この先もいっしょにやろうぜ、ということになって、まずはかれの写真に出ましたが、どんな具合に出ていることやら。"I need a very nice Oyaji" と言われて出たんだけど……(おっさんが女便所覗いてるみたいな写真になってやがった。さらになんと、その写真がドイツ政府のアート支援プログラムで買い上げられて、ベルリンの国会議事堂に数年後には飾られるんだって!!! ぎゃはははははは!) あと、この本は、かれの写真が最初にあってそれにあわせて文を書いたんだけれど、逆をやってみようということで、こっちがいろいろ文を書いてそれにかれの写真をつける、とかいうのをやってみるべ、と言っているのだが。はやく文を書かねば。

『新教養主義宣言(ぬるぬる)』晶文社、1999) あとがき
Slashing Ideas
 仮題だけど、自分では「ぬるぬる」にしたい。こういう完全にふざけたわけのわからないのか、恥ずかしいくらい明るいのにしたい。でも、自分の本の題名も自分では決められないとは知らなかった。参考意見が出せるだけなのね。書き下ろしを、と言われていたんだけれど、挫折。雑文集になってしまいました。
(99/10/12 付記:タイトルが決まらなくて(晶文社はタイトルにこだわるんだって)発売延期が続いていて、これでは年内刊行も危うい! と焦っていたとこで、やっとタイトルを決めてくれたんだが……『新教養主義宣言』だって……つまんねー、生硬ぅー、だっせー、かっこ悪ーい、遊びも余裕もかけらもなくてやだーこんなのー、おれなら本屋でこんなタイトルの本、ぜーったいに手にも取らないぞー、でもここでつっぱったって刊行が遅れるだけでつまんないし、もうどうでもいいや)

……しばらく見ていたら、なんか前ほど気にならなくなって、このタイトルでもいいか、と思いはじめてしまいましたよ。ま、いいのかも。たぶんスマッシング・パンプキンズなんていうバンド名も、最初はまぬけにきこえただろうね。中身がよければ名前のイメージも変わるのだ(ちなみにだからぼくは、差別語自主規制ってのは無意味でばかげてると思うのだ。)12月3日あたりに店頭公開予定! でもあたしゃその頃インドネシアだ。(99/11/15)

……というわけで、出ちまいました。刷り部数が少ないので、まだ流通が限られてるようですが。もうタイトルは完全に慣れて、さらに「教養ってかえって新鮮でいいかも」というご意見も聞いて、なんかこれでもいいなという感じ。図にのって反響ページ、つくりましたです。(99/12/10)



訳書など

うにゃうにゃ『赤い本のあの人』(2008.10)
意識について
 あまりの厚さにうなされそうです。

うにゃうにゃ『どこのだれかは知らないけれど、だれもがみんな知っている』(2008.10)
意識について
 匿名慈善のおじさんは/正義の味方のよい人よ

うにゃうにゃ『意識について聞いてみた』(2008.10)
意識について
 著名な意識関係者のインタビュー集。チャーマースの信奉者ははしごをはずされるので覚悟するよーに。

パトリック・ロスファス『キングキラー・クロニクル 第1部 風の名前』(白夜書房、渡辺佐智江+守岡桜 共訳、2008.6)
たのしい拷問
 ハリポタ人気に乗じたファンタジーみたいなもんか。最近のファンタジーの常として分厚い。珍しく純粋金儲けのチームプロジェクトだが、多方面からかなり絶賛されている。翻訳陣も本邦最強。たぶん2007/9の『麻薬書簡』に始まる X ヶ月連続著訳書刊行記録はここらで終わるはず。予定より 1 週間遅れの 4/7 に初稿あげ。うまくいけば、第二部、第三部が引き続き出るが、第二部は原著が半年以上遅れてしまっているので、意外な展開が出て翻訳陣があわてふためくのではないかとこわくてたまりません。

うにゃうにゃ『地球より頭を冷やせ』(2008.6)
地球より頭を冷やせ
 地球温暖化は起きているけれど、ゴアの言ってることはウソばっかりなので信じてはいけない、温暖化してもこの世の終わりではないので、冷静になるべきだし、温暖化警鐘屋さんが騒ぐいろんな問題は、よく見ると炭素削減なんかよりいい解決策のあるものばかり。高くて役にたたない京都なんかやめよう、というしごくまっとうな本。前作の繰り返しも多いけれど、それは内容的に仕方ないところ。冷静でよい本です。洞爺湖サミットに間に合わせるのが至上命題の一つ。4月半ばからはじめて、5/6に一通り完成。

うにゃうにゃ『たのしい拷問』(2008.5)
たのしい拷問
 なんか……とぉんでもない代物がやってきてしまいました。でもこの本がそんなに長いこと絶版だったとは! ニーズもあるみたいだし出版界の名誉にかけても放置しておくわけにはいかないでしょう。10月くらいからぼちぼちやって、年内に半分、3月末に入ってスパートして4/20に完成。

デブリン&ローデン数学で犯罪を解決する(ダイヤモンド社、2008.4)正誤表
数学者の犯罪解決簿
 某テレビシリーズ解説本。だけど日本での放映はケーブルだけなんだよなー。シリーズは、シーズン1はおもしろいがシーズン2はあまり数学がきれいに犯罪にからまなくなってきて魅力が少し低下。シーズン3は改善されているのかな。
 でもこの本はそれとはあまり関係なく、すごくおもしろい。地理的プロファイリングから、暗号、統計理論、変化点検出、ニューラルネット、データマイニング、カジノ、オペレーションズ・リサーチまで、よくまあここまでネタを広げられると思うくらいの幅の広さ。11/10 訳了。この時点で訳了本在庫が 5 点。われながらすごいな。ゲラ校了は 3 月。

シンガー&エイヴァリー地球温暖化は止まらない(2008.3)
地球温暖化は止まらない
 このままでは地球温暖化は止まらない、とのこと。地球温暖化は人為的なものではなく、昔からある1500年周期での温度の上下動によるもので、たまたまそれが二十世紀後半にあたっただけ、というのが主な主張。内容的には伊藤公紀『地球温暖化』を詳しくし、ついでに思いっきり関係者の悪口をちりばめたものと思えばいい。完全に賛成するわけではないが、人為的な影響だけ、というのはなかなか信じがたいので、たぶん著者たちが主張するような話もある程度関係しているんだと思う。10/31 訳了。ゲラが 12 月末に出てきて、1/1 に返送。1/27に校了。IPCC について結構ヤバイ話とかも多い。

フィリップ・ショートポル・ポト ある悪夢の歴史(白水社、2008.1)正誤表
ポル・ポト
 4/20 訳了。長い。とにかく長いんですけど。ゲラはやっと 10 月頭に出てきた。やはり長いこともあって、地名や人名表記が最初と最後でかなりぶれていたし、中国人の名前など調べきれなかったものもたくさんあって、珍しく三校までやった(通常は初校くらいしか見ない。『タメになる』で二校を真っ赤にしたのが珍しい例外)。3校目は確認用と言われていたんだが、見始めると細かく直したいところ、まちがえていたところなどボロボロ出てきた。12/5 にガーナの田舎から EMS で三校前半を戻したら、なんと一週間以上もかかった! 12/12 に三校後半を発送。こんどこそ手を離れた、かなあ。お値段はどうしても高くなってしまい、税込みで7000円台。

ローレンス・レッシグCODE V2(翔泳社、2007.12)正誤表
ヴァージョン2
 10/7訳了。ゲラ10/29、戻し11/2。11/10再校戻し。12/20刊行。悪くないんだが新しい論点がないならメジャーバージョンを上げるのは不適切ではないかなあ。バージョン1.1くらいだと思う。あとはかなりほめられているセカンドライフが失速しつつあるのが懸念。これで訳了本の在庫が4冊。
 最後のほうで、民主主義のあり方に加えて、今回は政治に金がかかりすぎて献金とロビイングだけで動いている状況について嘆いていて、The Economist によれば、それについてもCreative Commonsみたいに何か具体的にしようと画策しているとか。意外とおもしろいものの発端になるかもしれない。

イアン・エアーズその数学が戦略を決める(文藝春秋、2007.11)正誤表
計算ゴリゴリ
 8/20訳了。9月末にゲラ戻し。回帰分析は無敵です。データマイニング万歳の書。結構おもしろいよ。いくつか鬼門をつついていて、それがどう受け取られるかが少し楽しみ。一つは、出生前診断の話。もう一つは、ラリー・サマーズがハーバード大を追われた講演で何を言おうとしていたのかをきちんと説明していて、あれは女が生得的にバカだと言ったのではなく、あれを騒いだ連中のほうが統計学の知識のなさを露呈したバカなのだ、と指摘した部分。
 なお、いままで見た書評で最高のものは、なんとFortean Timesの各種オカルト文献の書評の中に混じっていたもの。統計分析が前提次第でいろんな結論を出せること、また正規分布でないものを大数の法則で正規分布に押し込めた際の各種問題点などについて説明し、それを完全に無視した書きぶりを批判。大したもんだ。
 あと、解説でこの人の邦訳ないと書いてしまったけど、実はあった! でもこの名前の表記だと検索しても出てこないのだ。許してください。増刷かかったらなおします。なお、名前の読みはぼくのが(当然)正しい。著者に確認とったのですもの。以下のメールを参照;

2) How should I pronounce your family name? Some say that it is like "Airs" as in the atmospheric air. Others say it is "Eye-yers" (eye as in eyeball). Which (or other) is correct?

IAN: as in the atmospheric air... and Ian is pronounced like the last two syllables in European

ポール・ポースト戦争の経済学(バジリコ、2007/10)正誤表
戦争の経済学
 4/5訳了。ゲラ7月末、再校 9 月末。なかなか楽しい教材。追加の章も書きました。10月末刊行。かつて『一冊の本』で書評した本。F-16 のお値段や、核物質の闇価格、イスラムのハワラ・ネットワークや、なぜ人は自爆テロなんていう不合理きわまることをするのかについての疑似経済的説明など、楽しい話が満載。しかし価格 1,890 円となっているのでびっくり。結構ゲラは厚みがあったので、3,000 円は超えるかも、と覚悟していたのに。
 なお、題名は同じ韓リフ先生の論文は、戦争そのものの経済学ではなく、日本の戦時下での経済政策というような内容で、方向性はちょっとちがう(がおもしろい)。

ウィリアム・バロウズ&アレン・ギンズバーグ麻薬書簡 再現版(河出文庫, 2007/9)
麻薬書簡
 1/1 翻訳着手、1/4 訳了。ゲラ 7 月。翻訳言わずとしれた『麻薬書簡』。旧訳のひどさは折り紙付きだったので、きちんとなおしたものが出せるのは本当にありがたいことです。本文は一日半ほどであげた。原著は書簡集の編集をしたオリバー・ハリス編によるもので、かれは張り切ってすさまじく長い序文と、ものすごくたくさんの注を書いて各種原稿間の異同を事細かに説明している。ただしハリスの文章は、変な文学的はやりにとらわれてコロニアリズムがどうしたとかくだらないほうに走りすぎ、さらにかっこつけたつもりのレトリックがすべっていて大変にアレです。

スティーブン・ウェーバーオープンソースの成功(守岡桜と共訳、毎日コミュニケーションズ、2007/01)
オープンソース
 政治経済学者の書いた、オープンソースに関する中身のない本。「ハッカーにとって、産業革命のヒーローはフォードやロックフェラーではなくアインシュタインである」なんてことを平気で言ってる馬鹿の本。産業革命はふつうはワットにニューコメンだし、アインシュタインは産業革命になんかなーんの影響もねーよ! その他あちこちで無知丸出しの腹立たしい本。2005 年春にはしあげたのに、一向にゲラも出てこない。このままうやむやにされたらいやだなあ。その後ゲラは 2006 年春にきたが、その後は出る気配まったくなし。2006 年初秋に連絡したら「11 月には出します」と言っていたが、もう 12 月。あきらめました……と思ったらやっぱり出ることになったようで。

スティーブン・ジョンソンダメなものは、タメになる テレビやゲームは頭を良くしている(守岡桜と共訳、翔泳社、2006.09)
ダメなものは、タメになる
 昔、査読した本が結局出ることになった。中身は、ゲームすると頭がよくなるしテレビ見ても頭がよくなるよ、という話。ゲーム脳はよいってことですな。軽いし繰り返しが多くてアレだが、おもしろい本だと思う。査読を書いたときよりアメリカ産テレビドラマも普及したことだし、わかりやすいのでは。なお、ゲームには比較的疎いので共訳者には感謝。
 四角絵日記が肩入れしていて、監修に入られた。またかれらがゲームショーに出すのにあわせて出したいとかで、きびしく期日を切られた仕事となりました。このため通常はゲラではほとんど手を入れないぼくが、初校、再校ゲラを真っ赤にするという珍しい事態に。道後温泉でゲラに赤を入れておりました。

ジョージ・エインズリー誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか(NTT 出版、2006.08)
誘惑される意志
 割引率を生物学的に基礎づけて、なぜ人が後悔するのか、なぜ人が目の前の誘惑に負けるのか、といっただれしも経験ある身近な活動を説明したすごい本。行動経済学、なんてのの一派に入れられることが多いが、著者は心理学者というか臨床の人。
 しかし本書でもう一つ驚いたのは、ハトやサルが意外にものすごく賢いということ。サルはそのままだと死ぬまでコカインを自分に打ち続けるけれど、それがやばいことを認識していて、コカインが得られなくする手段を用意すると、それを使って自分が誘惑に負けてもコカインが出ないようにするのだと。すごい。

ロバート・グーラ議論で人をだます方法(朝日新聞社、2006.03)
論理で人をだます方法
 実際の中身は、「理屈になっていない物言いを見分けてだまされないようにする方法」とでも言うべきもの。人々がよく使う、議論をごまかす手口についてまとめた本。あるいは、故意ではなくてもありがちなまちがいに関する記述も多い。ただし三段論法の解説で当人がまちがえたりしていて、ちょっと不用意です。そういうとこはなおしておきました。邦訳は、イラストが大変楽しくて見た目もよい本になっております。山形の訳書としてはおとなしいが、まあそういうのもありでしょう。著者名は、ギュラかグーラか最後まではっきりしませんでしたが、グーラに落ち着きました。なお、原著はウェブで全文公開されています。

ハリー・フランクファートウンコな議論(筑摩書房, 2006.01)
うんこ
 そこのあなた、最近世の中、うんこなことが多すぎると思いませんか! そういうあなたに是非一冊。うふふふふ。マジです。このところ長ったらしい本ばかり続いていたので、こういう短い本は嬉しいなあ。あまりに短くて、そのままでは本にならないと言われたため、本文とほぼ同量の解説を書かされる (だから値段も原書の倍なのよ)。かわりといっちゃあなんですが、表紙では著者より訳者のぼくのほうがでかい扱い。あははは。
 期待していたほど売れずに、ちょっとがっかり。ねらいすぎましたかな。

ハンス・ルエディ・ギーガー『ネクロノミコン 1』(河出書房新社, 2005.01)
ネクロノミコン1
 ぼくの処女翻訳のアレかな、と思うんだが、でもオレ、ネクロノミコン1はやってないのよねー。ぼくがやったのはネクロノミコン2からなんだ。なんでぼくが訳者になってるんだろう。まちがいは少し指摘したけれど。山形訳にしたほうが売れると思った、とか? 河出の説明を見ると、デビー・ハリーやフューチャーキルが入ってるというから、なんか1と2と「バイオメカノイド」適当に切り混ぜて一冊にしたような感じもするんだけど(それならまあ一部は山形訳ではあるなあ)、本も送ってきてないし、確認できず。しかもその後「ネクロノミコン2」も出たじゃないか。デビー・ハリーとかはこっちのほうに入ってるはずだぞ。でもこっちにはぼくの名前は入ってないし、ってことはどうなってるんだろう。まあいずれにしても、これは確か買い取りだったんで、こうして新しく出てもぼくにお金は入らない……まいっか。トレヴィル当時は、武邑光祐と伊藤俊治が(くそつまんねー)解説書いてます、というのが売りだったんだけど、それは削除したみたいねー。いい判断。

ダニエル・デネット自由は進化する(NTT出版, 2005.03)サポートページ
自由は進化する
 ダニエル・デネットの、自由だって進化の産物なのだ、というなかなかに野心的な本。そのためにまず決定論というものをチマチマ見ていって、という話から、なんだか未来は決定されているかもしれないがそれがどう決定されているかはわからん、という話と、決定されてるから何もしない、というやつと決定されてないかもしれないから頑張る、というやつとでは後者のほうが生き残る確率が高く、よって裁量の余地があると考えるやつのほうが進化上有利だ、という話になってくると、なんかそれって本来ぼくたちが考えている「自由」とかそういうのとちがうような気がするんですけど……年内に出したい、とか言ってますが、まあ無理ではないかと。2 月頭にスリランカで訳了。なお、本全体の話はもっと広い。解説がたいへんに長くなってしまいました。

アーキグラムArchigram Movies!(アップリンク, 2005.01)
Archigram Movies
 アーキグラムのビデオ字幕。翻訳したら、タイムスコア入りで削減版が送られてきた。字幕にあわせて文字数を削るのは面倒というか、ちょっと作業として横から突きが入ってくる感じで、おもしろかった。水戸芸術館でやったアーキグラム展にあわせての企画。おまけでついてくるマウスパッドはすさまじい厚さで、こんなもん使えないよー! なお、同時期に出る……はずが展覧会の終わりちかくにやっと出たカタログでも、クック=磯崎対談などを訳しておりますが、磯崎新、もっとまじめにやれー。

R.A.ラファティ『アーキペラゴ』 pdf 3章まで

 昔訳したのが出てきたもんで。最初からわけわからん小説なんですが、さいごまでまったく変わらずこの調子で続きます。小説に意味とかストーリーとか教訓を求める人には絶対わからんでしょう(おまえがわかってるかと言われると、うーむ、ノーコメント。わからないことがあったら、柳下毅一郎せんせいにきいてみよう!) 訳は大学生当時に訳したものそのまま。いまなら絶対に使わない表現とかがあってほほえましい。出版したいところがあればどうぞー。

ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』(朝日出版社、2005.3)テキスト全文
鏡の国のアリス
 言わずとしれたアリスの続きで、カツラをかぶったスズメバチ入り。前のがそんなに売れたとも思えないのに、なんか出すんだって。これまたプロジェクト杉田玄白に収録したもの。2004 年春にゲラがきたら、かなり恣意的に思える校正がいっぱい入っていて、相当部分をもとに戻したら、がらっと戻したゲラを出し直してくれて、それをしばらく抱えっぱなしにしていたのを夏にフィリピンから帰ってきたときにやっつけた。年内には出るかなあ。
 結局、2005 年3月になりました。

イアン・ワトスンエンベディング(国書刊行会、2004.10)
エンベディング表紙
 なにやら柳下がたくさん訳す、SF シリーズの一冊。昔 NW-SF で読んだ書評では、すさまじい本で言語学と民俗学のバリバリの知識がないと理解しがたく云々、という話だったので、かなりビビって目を通してみたら、なあんだ。こんな程度か。こういうのを読むと、なんかしょせん SF というのは、という気がしなくもない。まじめにやろうとすると、さいごのところでつい逃げを打ってしまうんだよな。イアン・ワトソンの処女長編で、リキが入っている分、どうも生硬な印象はある。
 原稿は 2003 年中にあげたんだが、柳下がグズなせいでウルフがつかえて、いつまでたってもゲラもなにもこない。順番変えてワトスンをシリーズの一番にしたらぁ、と思ったんだが、ほっといたら夏にやっとウルフの「ケルベロス第五の首」が出た。む、むずかしい……20 回くらいメモ取りながら読まないとりかいできないぞ……で、ウルフが出た直後に「来月ワトスン出すからゲラをすぐチェックしろ」だって。そりゃねーよ。でもウルフの後ではワトスンは天使のようにわかりやすく思えます。
 ということで 10 月末に出ました。なんかぼくが読むより人が読む方が評価高いみたい。

ローレンス・レッシグ『Free Culture』(翔泳社、2004.7)正誤表
Commons
 ローレンス・レッシグ三冊目の著書。この本の話をはじめて聞いたときには、エルドレッド裁判がまさかの最高裁で、レッシグも意気揚々、だったんだけれどねえ……残念でした。その意味で、苦渋の一冊ではあります。
 訳は相変わらず突貫。 5 月いっぱいにあげろ、というお達しで、3 日遅れほどであげた。正味一ヶ月ほどか。始めたのが GW 直前から。なんかどうしても 7 月に出すとかで。これは日本にいて他の仕事もいっぱいある時で、大変でした。あとがきもかなりやっつけ。でも、この本に着手以前にとっくに仕上げていたワトソンやバルモンドがまだゲラすら出てこないというのに、こちらはもう本になってしまうのですねえ。

ウィリアム・バロウズ『ソフトマシーン』(柳下と共訳、河出文庫、2004.6)文庫版へのあとがき
softmachine
 お懐かしや、ペヨトルでやったバロウズですわ。ながらく絶版でしたがこうしてまた日の目を見ることとなりました。理由は忘れたが変なペンネームを使っていた柳下もカミングアウト。翻訳はほとんど(山形分は)いじってない。柳下のほうはどうだったんだろう。つきあわせる気もないけれど、でもまああんまりないか。たぶんお互い、いまならバロウズなんてどうせだれもチェックしないし、と思って流す部分も多いだろうけれど、当時はかなり真剣に二人で議論して訳を決めたのでした。これが売れてくれれば、ノヴァ急報も、そして爆発した切符の新訳も……

セシル・バルモンドインフォーマル(2005.4)
Informal
 建築の本。著者は、むしろ構造エンジニアの人で、デザイナーじゃないんだけど、コールハースとかのわがままな建築を形にするので、なんかあれに近いノリの文章になっているような気がする。なお、5 月にうちあわせをしたとき、著者は印刷される紙の重さはなんだとか、インキののりがどうしたとか、そんなことばかり気にしていておもしろかった。そういうところは、デザイナーというよりエンジニアくさい感じかな。が、一方で、「デザイン維持のためならテキストを変えるのはぜんぜんオッケー」だそうなので……
 また訳してると、全編「知の欺瞞」ノリが全開で頭痛なのはご愛敬にしても、途中で無理数の定義とか超越数の定義とか書いてあるものがことごとくまちがっているのには呆然。こんな人に構造設計やらせて大丈夫だろうか。訳は 2003 年夏にすぱぱっとあげて、その後ブックデザインに時間をかけるはずが、訳稿がかれの事務所の日本人の手元でもう一年以上止まっていてまったく動いていないんだって。いい加減にしてくれよぅ。どうせ大した金になるとは期待してないけど、日の目くらい見せてやってくれよぅ。
……と思ったらやっと動きました。超越数や無理数の定義は、全部ぼくがなおした。途中の数式のまちがいもなおした。ポモちっくな文を編集者がお気に召さなかったようで、なんかあれこれケチがついておりましたが、まあいいや。

スティーブン・ジョンソン創発(ソフトバンク、2004.1)
emergence
 通俗科学解説書。ほら、瀬名秀明の脳谷で、神様を見たりとか、その手のヤツ……ではなく、自己組織化による脳とか都市とかアリの巣とかの話。ぼくはこの手の創発マンセー論は必ずしも好きじゃない。こういう連中の多くは、中央集権型でない分散型自律的創発というのは、いわば民主的でそっちのほうが優れていると無邪気に考えている場合があまりに多いからで、この著者もその例外ではないのだ。そうじゃないとは言うんだけれどね、本人は。この人の最大の問題は、創発にばかり目がいっていて、それに対比されている官僚制やトップダウン方式というものについてぜんぜんわかってないところ。これもありがちなんだけど。そして創発的に思い通りの結果を出すためにトップダウン式に全体の原理を変えろ、とかいう変な話を平気でするのだ。解説は書けなかったので、注にいろいろまぎれこませている。

ダン・ヴァートンハッカー日記』(翔泳社、2003.12)
HackerDiaries
 ハッカーというより、クラッカー系の子たちを取材して書いたルポ。2600系クラッカーたちがどんなふうにその道に入るか、という話としては、まあおもしろい。ただし著者は、はっきし言ってヴァカですな。ハッカーは知識の探求だ、ウェブの書換などは犯罪だと言いつつ、一方でクラッカー連中がちんけな政治理念をふりかざすのはよいことで、環境問題や人権意識のためであればウェブ書換はかならずしも悪くないだの。この人の知ってる唯一の善玉ハッカーというのは、スティーブ・ウォズニアックだけ。やれやれ。なお、出た本のカバー(帯の下)を見るととんでもない誤植が……

ポール・クルーグマンクルーグマン教授の経済入門(日経ビジネス人文庫、2003.11) 出版社ページ, あとがき (旧版) サポートページ
diminishbunko
 あれがついに文庫化! 不労所得万歳。少し訳をちょこちょこふつうに戻してみるつもりではある。調整インフレ本とあわせてセット販売できるとうれしいんだけど……あと、その後のクルーグマンの活躍ぶりについてもあれこれ書いた。ところで、メディアワークス版の CG クルーグマンは結構似ていたが、この日経文庫版の CG クルーグマンは、トム・グリーンみたいであたしゃチョイ違和感ある。

ポール・クルーグマン他『クルーグマン教授の日本経済入門これぞ本家本元:インフレターゲティングのすべて』春秋社、2003.11) サポートページ
It's Baaack
 昔訳したやつをまとめて本にして、という。翻訳はとっくにあがっているんだが、まずクルーグマンが了承の回答をよこさず、そのうちにいろんな状況が変わってしまったので、どういう解説をつけるかで少し頭をひねる必要があるのだ。がんばらねば。というわけでがんばりました。しかし株価があがってなんか景気回復ムードで、まずったなあ……と思っていたら、なんとあつらえたように発行直前に日経平均また一万円割れ。わははは、って喜んじゃいかんな。なお、春秋社のウェブページは、なんだかずいぶん停滞しています。

ジェイムズ「ゲロンパ」ブラウン『おれがJBだ!』(文春文庫、2003.9)
JB
 昔訳した(というか、訳し直してあげた)ものを、井筒映画『ゲロンパ!』(ゲロッパ、だっけ)とのタイアップで出す、らしい。あと本人も来日するらしいね。それとこいつはぼく一人が訳しているわけではないし。ほかの人たちって連絡とれるのかなあ。渡辺さっちゃんはまあ大丈夫だけれど(なんとかなったみたい)。まああの JB の本ですから、自画自賛のかたまりみたいな本。ああいう生き方というのは、楽しいんだろうか、それともつっぱって疲れるんだろうか。特に解説とかは書いてないので。

ビョルン・ロンボルグ『環境危機をあおってはいけない:地球環境のホントの実態』(文藝春秋、2003.6)サポートページ 文藝春秋のサポートページ
環境危機をあおってはいけない
 世界の環境保護活動家たちをふるえあがらせた、問題の本。『暗号技術大全』と並んで、ぼくの訳書として記録的な厚さ。が、訳してこんなにおもしろかった本もなかなかない。サポートページでは、Scientific Americanでの批判と反論も訳してますので、ごらんあれ。なお、こちらが LaTeX で pdf 作って入稿したのに、文藝春秋ではあまり活用していただけず、ちょっとがっかり。用語統一でも校正でも、検索一発でできるのに……とっても便利なのに……。あと、本の中に参考文献をおさめきれなかったのは、価格を抑えるためとはいえ、非常に残念。また、索引も本につけられなかった。これはファイルにして、このサポートサイトに置いてあります。ただし参考文献は URL も多いし、ネット上にあったほうが便利ではあるのです。

ブルース・シュナイアー『暗号技術大全』(ソフトバンク、2003.5)正誤表他 ソフトバンクのサポートページ
暗号技術大全
 暗号の大家 Bruce Schneier の名著Applied Cryptography。この分野はその後の進歩がはやくて、はやくも古びてはきているけれど、一応ある時点での横並び整理として有用。この分厚い本を何年かかるかと思ったら、部室で訳者募集して手分けしてやったらものの数ヶ月でできたのはおどろき。中身を更新したいなと思ったが、とてもそこまでの余裕がなかった。また、一部本家のサポートページで「ここのソースコードはちがっている」とかしか書いていない部分があって(じゃあちがってないのを書いてくれよ!)、そういうのも正しくなおしたけれど、これまた断念。が、読み物としてもなかなか楽しい本なので、ぜひご一読を。あがってきた本を見ると、われながらよくまあこんな馬鹿な仕事を引き受けたもんだ、と感慨ひとしお。
 またソフトバンクのサポートページに行くと、巻末の C のソースコードもダウンロードできるので是非。

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』(朝日出版社、2003.5)テキスト全文
不思議の国のアリス
 言わずとしれたアリスでございます。プロジェクト杉田玄白に入れておいたら出版したいとのこと。もちろん、杉田玄白版のファイルはそのまま。本のヤツも、好きにコピーとかしてよろしい。ただし、イラストには注意。それさえクリアすれば、全部コピーして売ってもいいぞ(そんなの買うヤツいないと思うが)。ただし、本のやつはそこそこ編集部の手が入っているのと、あとおまけのあとがきをつけました。また、このイラストはあまりテニエルちっくでないのに、一方でイメージをあまり極端にゆがめていない気がする。これ以外だと、テニエルに影響されるか、あるいは自己主張が強くなりすぎてエグい感じになるイラストが多いのです。たとえばラルフ・ステッドマンのやつとか(好きですけど)。このイラストだと、そいう押しつけがましさもないのはいい。

ロバート・スティール『オープンソース世界のスパイと秘密pdf 全文
Commons
 某出版社が出すというので訳したら、終わった頃に出版社が傾いてもう出せないという電話あり。おいー、そりゃないだろう。同じことが何度も書いてあってくどいんだが、でも中身はおもしろい。秘密情報で喜んでるのはもう古い、秘密情報は収集ばかりに力点が置かれてしまって、その後の解析がまったくないがしろにされており(エシュロンも集めるけどちっとも使えない)、さらに集めた情報が秘密であるが故に共有できず、結局利用されずに腐ってばかりいる、という議論。公開情報を有効利用したほうがずっと役にたつので、いままでのスパイの発想を捨てて、オープンソースを活用することで諜報活動を革新しよう、という議論。著者はもと CIA で、秘密主義からくる情報の重複収集や、公開情報軽視からくる各種の対応の遅れをまのあたりにしているので、説得力ありあり。HOPE にきて講演してったので知ったのだ。かれの発想に近い機関がなんとなくアメリカではできあがりつつある模様。どっか出版したいところあれば熱烈募集中。

ローレンス・レッシグ『コモンズ』(翔泳社、2002)正誤表
Commons
 ローレンス・レッシグ二冊目の著書。著作権とか特許とか、その他各種の財産権をひたすら強化するのは得策ではないことを、非常にていねいに描いた本。ちょうど訳があがったときに来日中で、あちこちで販促なども。なかなか面白うございました。あちこちでこれをめぐって議論なんかも起きて、これまたたのし。
 訳は相変わらず突貫。とにかくレッシグが日本にいるうちにあげるべえ、というのが至上命令。マラウイにて、どうせ夜はやることがなかったので、結構好都合だった。

クリストファー・ロック『ゴンゾー・マーケティング』(翔泳社、2002)正誤表
Gonzo
 EGRで名高いクリストファー・ロックの初の単独著書。マーケティングの本だけど、批判の部分はちょいとおもしろい。では代案を、という部分がトホホだけれど。流し読みすると、なかなかノリがあっていいのだけれど、精読には耐えない。が、マーケティングなんてそもそも精読に耐えないものなので、いいのかもしれない。
 訳はこれまた突貫。2ヶ月かけずにあげている。本文の組み方がなんかちょっと読みにくい感じ。字間があんまりないのと、なんか行間が妙につまっているのと。でも、装丁は妙に豪華。アマゾンの書評では、誤植が多いと書かれているけれど、ぼくはそんなに気がつかないけどな。でも正誤表作りました

ブルース・シュナイアー『暗号の秘密とウソ』(翔泳社、2001)正誤表
Secret and Lies
 暗号の大家 Bruce Schneier の最新刊。この人は Applied Cryptography で有名だけれど、その後、暗号だけじゃセキュリティは確保できないという認識に到達して、もっと検出と対応をきちんとやんなきゃダメだ、という方向性を打ち出した。本書では、その考え方を解説するとともに、なぜいろんな世の中のセキュリティがダメかについて、とっても明快な説明をしている。
 訳は、ほとんど突貫。手をつけるのが遅くなったからだけれど、最後の 4 章くらいを週末二日であげるとか、自分でも信じがたいペース。で、その後の出版も超特急でしたねー。でもおかげで誤植がいいっぱいあるという。なかでも 280 がなんと 280 になったりしているという、信じがたいミス! すみませんすみません、正誤表作りました

ペッカ・ヒマネン『ハッカー倫理』(河出書房新社、2001) あとがき
Hacker Ethic
 ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を受けて、これからはプロテスタンティズムの倫理にかわりハッカー倫理が支配的になるのだ、と言いたいんだが言えていない本。ハッカー倫理とは何か、というところまでは書ききれているし、それがあちこちで昔よりも目立つようになっている、ということは言えている。でも、それがプロテスタンティズムの倫理にとってかわるとか、圧倒するとかいうところは論証皆無。宿題の多い本。原著のホームページ
 序文はリーヌス・トーヴァルズで、あとがきがマニュエル・カステル。カステルはネットワーク社会経済論と都市論では有名な人で、だけれど書く本がどれも無節操にぶあつくて、いつか読もうと思って放ってあった。でも、この解説を読んでかなり失望。くだらない言い換えに終始、現状説明と、そこからの抽象化が区別できずに、結局堂々巡りの議論が展開されるだけ。インターネットも遺伝子組み替えも、どっちも情報の組み替えが新しい意味を生み出すという点で情報主義(informationalism) とネットワーク社会の基盤、と言うんだけど……あのなあ。そんな表向きの「組み替え」なんてものに注目すれば、なんにだって共通点が出てくるだろうに。フリッチョフ・カプラとか複雑系とか、お約束の神秘主義もほどよく添えてあります。カステルスがこんなにつまらない論者だというのがわかったのが、本書のいちばんの収穫かも。
 ものすごい急な翻訳をしろと言われて、共訳でなんとか。

Code 表紙
ローレンス・レッシグ『CODE』(翔泳社、2001)正誤表

 かなりすごい本。たぶんフーコー的な「見えざる権力」を、きちんと分類・分析して、見える権力と見えざる権力の関係についてまでふみこみ、さらにはそれを具体的に変えていくための方策まで考えている。インターネットの法規制関係の本だと思われるかもしれないけれど、実際にはもっともっと広い射程を持った本。インターネットがらみの話しも、10 年先の状況まで見据えて、そのためにいまから動こうという本。必読。訳しているときには、くどい書き方の本だな、と思ったけれど、こうして紙になってみるとそんなに気にならない。

聖書本 表紙
ケン・スミス『だれも教えてくれない聖書の読み方』晶文社、2001)あとがき

意地の悪い聖書読本。エリック・レイモンドもお気に入り。翻訳はもう 1 年以上前に終わっているのよ。あとは、解説と、聖書の中身についての解説。ミッション系の学校にいって、聖書の授業とか受けたことのある人々には大受けするんだが、それ以外の人にどうアピールするか。あと、クソまじめなキリスト教徒がつまらん反応しそうだなぁ。しかし、おもしろい本なのだ。それに勉強になるよ。2001 年に出て、そこそこ好評。まさかと思ったけれど、なんと増刷かかったもんね。実際の反応を見ると、笑いながらまじめ、というのがわからない人が、ただのギャグだと思ったり、まじめにあれこれ言ったり、と、まあ不自由な人が多いようで。

Inmates 表紙
アラン・クーパーコンピュータはむずかしすぎて使えない!(キチガイの仕切る精神病院:ソフト開発がダメなわけ)(翔泳社、2000)序章、第1章と訳者あとがきはこちらで

翻訳は1999/10にはあがってるんだけれど、うーん、どう売るかがなやみどころだし、まあ一ヶ月やそこらで古びる本でもないので、いろいろ考えてから発売するそうな。中身は、ソフト開発批判。いまのソフトがダメなのは、普通の人間とは思考回路のちがうプログラマが自分の趣味でソフトをつくるからだ! という中身。診断部分はきわめておもしろい。解決策が尻すぼみなのが残念だが、まあこれはそうそう簡単に解決できる問題ではないでしょう。2000年2月に出ました。すごく読みやすいデザイン。

伽藍とバザール 表紙
エリック・レイモンド『伽藍とバザール』(光芒社、1999) 本文 あとがき

 本になりましたっす。でも、中身は Web で読める。さて、これでどのくらい本が売れるかが楽しみ。あと、どうしても縦書きにするというので、横文字を全部カタカナ化したのはちょっと無理があるんじゃないかとは思う。確かにたてのほうが読み易いんだけどね。

ラスベガス★71 表紙
ハンター・S・トンプソン『ラスベガスびくびくゲロゲロ紀行』(ロッキング・オン社、1999) 本文 あとがき

 邦題は『ラスベガス★71』だって。映画公開に間に合わせろってことでとっても急がされたけれど、結局公開が少し遅れるので、あまり急がなくてもよかったみたいだ。それと……映画はあまりいいできじゃなかった。あとがきにも書いたとおり、勢いだけの楽な翻訳。あとがきは、これがオリジナルで、長さの関係でここから 25% ほど削った。トンプソンについてはまあ一通り知っていたけれど、ラルフ・ステッドマンについても何か書けと言われて、最初はできないと言ったけれど、調べるうちに書けてしまった。10月に出た。
なお、本書の造本は、見る人が見ればこりまくりなのがわかる。編集の方が遊びに遊んで作っているのです。まあカバーの見返しがなぜああいう正方形の切取線がついているのか、ちょっと考えてほしい。それと扉前の薄い紙って、他の用途は……

クルーグマン教授の経済入門 表紙
ポール・クルーグマンクルーグマン教授の経済入門メディアワークス、1998) 本文 あとがき 正誤表

 お待たせしました。1998.10.28、ついに発売。無知なる大衆どもよ、これを読んで笑いと涙と目からウロコの感動にうちふるえて腹をよじらせつつのたうちまわるがよいのだ。「男子もすなる経済学を、婦女子にもさせむとぞ思ふ」(©紀貫之)じゃ。おれはこれで世の中変えちゃる! しかし一方で、経済屋さんたちからはかなりの反発が予想されて、ぼくはとってもこわいですう。いぢめんじゃねーぞ、てめーら。それに I didn't make it for you! (©Dr. Frank'n Furter) なんかえらく売れてるみたい。

ハーモニー・コリン『競馬場暴動でイカレポンチ』(ロッキングオン社、1998、渡辺佐智江と共訳)本文

 ハーモニー・コリン初監督映画「ガンモ」公開プロモの一環で、監督の処女長編。正式邦題は『クラックアップ』だけど、ぼくはこの訳題が好き。翻訳期間ほんの 10 日。密度の低い、楽な訳でした。差別用語てんこ盛りなんだけど、どうするんだろう。あといろんな断片でできている小説なので、表記とかぜんぜん統一しないで、かえってゆらすようにしたら、それを校正の人が律儀にすべてそろえて、渡辺と二人で激怒して全部戻す。なぜ編集者は表記の統一なんてことを気にするのかな。前後で漢字が少なければ漢字にして、あとのほうで漢字がつまりすぎたらひらいて、そのページの字面でいくらでも変わっていいはずなのに。読む方は気になんかしないよ。一部書店では売れてるみたい。リブロとか青山ブックセンターとか。まあ、そういう本だな。

ニック・ケイヴ『キング・インク 2』(思潮社、1998)本文 あとがき


A Year 表紙
ブライアン・イーノ『A Year: 一年』パルコ、1998) 本文

 イーノの 1995 年日記。何の気なしに引き受けたら、いや長い長い。全部で 1,300 枚! でも、娘の話が多すぎるのを除けばおもしろい本。かれの気取ったアーティスト嫌いがよくわかって楽しいし、議論も納得できるものが多い。
 しかし翻訳作業は、著者に直接質問させてくれないので頭にきた。義理の妹が出てきて、原文のここの記述がおかしいんだけど、と言ったら「アーティストとしてのイーノの意志を重視するためまちがいもふくめて変えるな、イーノは正しさにこだわる人ではありません」とのたまい、そのくせ、picture ってのが出てきたときにこれが写真か絵かと尋ねたら「わかんないから作品と訳しておけ」だと。その他質問もすべて、彼女ともう一人日本人のミドルマンが勝手に答える。一言本人にきいてくれよ!

ペンギン・ブックス編『インタヴューズ』I, II(文藝春秋社、訳者多数、1998)

 1998 年 10 月末にやっと刊行されましたですぅ。ぼくが担当したのは、ウィリアム・バロウズ、ブリガム・ヤング(モルモン教中興の祖)、カール・マルクスベニート・ムッソリーニ、J・F・ケネディ、ノーマン・メイラー。最初はバロウズだけきて、あとやりたいのあるか、と言うから独裁者系と小説家を。スターリンもやりたかったけど、ツバがついてた。訳だけじゃなくて、ブリガム・ヤングの項ではモルモン教の解説まで書いたのに(高校がアジア総本山の近くだからよく知ってるんだ。とんでもない教義だよ)。もっとも教義解説は結局載らなかった。ゲラでは生き残ってたのに。仕事をしたのは 1997 年の 8 月だから、刊行の 1 年以上前。すごいせかされたんだけどなあ。でも高くて厚い本なのに、すぐ増刷かかってすごい。

ウィリアム・バロウズ大統領就任後のルーズベルト(『ユリイカ』バロウズ特集号, 1998) pdf 全文

 ユリイカ用に訳したものの全文。短いホント手すさびみたいな代物。訳も手すさびでございます。

わが教育 表紙 ウィリアム・バロウズ夢の書:わが教育河出書房新社、1998) 本文 あとがき 正誤表

 バロウズの遺作。解説について、似たようなネタのつかいまわしはいやなんだが、でも一人の人の死についてそんな器用にいろんな意見が言えるもんか! だいたい本文だって似たようなネタの使い回しだわい。というわけで、どっかで読んだような話が入ってたらごめんなさい。

ゴースト 表紙ウィリアム・バロウズ『ゴースト』河出書房新社、1996) 本文 あとがき

 余白のさらに多い、とっても短い本。翻訳は4日であげた。これについては、すでに『キリストと絶滅動物博物館』という短編があって、それをなんかで(現代詩手帖だったかな)訳す話が出ていたんだが、訳してみたところ「それはこんど長編になるからダメ」という返事がきたのだった。で、それを多少使い回したことも訳がはやくあがった一因ではあった。

内なるネコ 表紙
ウィリアム・バロウズ『内なるネコ』河出書房新社、1996) 本文 あとがき

 余白の多い、とっても短い本。一週間弱で翻訳はあげた。これも解説の中身はほとんど同じだなあ。なお、掲載時には後半の広州でネコを食べ損ねた話は削除されてしまった。ネコ好きをおちょくっているからってことで。削除分はこのまま、CUTで使った。

ウィリアム・バロウズ『ノヴァ急報』(ペヨトル工房、1994) 本文 (pdf) あとがき

ペヨトルが解散してしまったし、入手できなくなってしまったので、文だけは見られるようにしておく。ただし関係者以外は見てはいけません。あと印刷とかはできないので悪しからず。

マックス・アギレーラ=ヘルウェグ『劇場としての手術』(トレヴィル、1997) 全文

 友だちの本を訳すのは、うれしいけどこわい。だって万が一駄作だったらどうしよう……でも、これは衝撃的にいい写真集だった。文はちょっと大仰にセンチになりすぎてるきらいはあるけど、でも言いたいことはわかる。マックスは現在、医学予備校で、そろそろ本科に進めるはず。(ダブリンの医学校に受かったそうな。おめでとさん!19980901)(その後、ダブリンに愛想をつかして(なんか、この写真集はダブリンでは封印しろとかいろいろ言われたんだって)、ニューオーリンズのテュレーン医学校に転籍。本人がとっても喜んでいたので、ダブリンはかなりアレだったんだろうねえ。19991101)

ジャン・スタラー写真集『オン・プラネット・アース』(トレヴィル、1997) 全文

 日米同時発売で、写真集そのものは英語、日本にはそれに翻訳ブックレットがつく形になっている。

蝶の物語たち
ウィリアム・T・ヴォルマン『蝶の物語たち』(白水社、1997.12)全文 (pdf) 訳者あとがき

 ヴォルマンのちょっといいお話。本人の手になるへたくそなイラストもなかなか味わいぶかいものがあります。カンボジアの思い出もセンチメンタル。時間はかかったけれど、いったんのりだしたらガーガー訳せた。最初のうだうださ加減がなかなか最初はつかめなかったのだ。

H. R. ギーガー『スピーシーズ』(トレヴィル、1996) 全文

 これは、初稿のゲラをもらって、それで作業を始めた。写真やアートのアレにえらい気を使ってて、全部モザイクかけてあるんだ。だから絵の描写をされても、何がなにやらさっぱりわからない。で、初稿ではギーガーは結構機嫌がよくて「久々に思い通りの仕事ができた」と喜んでるんだけど、その訳が終わってから、最終稿ってのがきて、中身が完全に変わってる! 完成した映画を観てギーガーが激怒して(まあ、あんなクズ映画じゃ当然だわな)、「何一つおれの思い通りにいってない!」という罵倒文に変えてあるんだもん。全部やりなおし。二度手間だ。週末2日であげる仕事ではあったけど。
 まあひどい映画だったから、気持ちはわかる。ナスターシャ・ヘンストリッジは大根のきわみ。シナリオもひどいし、最後に洞窟でエイリアンの赤ん坊が見る見るうちに成長するのは明らかに市販のモーフィングソフトみたいなお手軽仕上げだし。それでも続編ができるんだからあきれたもんよ。

H. R. ギーガー『フィルムデザイン』(トレヴィル、1996) 全文

 ギーガーの「スピーシーズ」以前の映画関係作品を集めた作品集。この人に満足してもらえる映画をつくるのは本当に大変みたい。「帝都物語」ボロクソです。「縮尺まちがえてる!」だもんなー。

『アイアンマウンテン報告』表紙
レナード・リュイン『アイアンマウンテン報告』ダイヤモンド社、1997.06)全文 (pdf) 訳者あとがき

 この本は訳せてうれしかった。ジュディス・メリルせんせい、ついにぼくはやりましたです! この解説については、「猪口邦子はその通りだが、亭主のほうだって五十歩百歩」とゆーご意見をかなり多方面からいただいた。そうなのかぁ。でも、整理屋としてはそれなりにいいと思うんだけどな。なお、売れ行きはあんまりよくなかったけれど、いまでもちびちびと需要はあるみたい。あと、これすでにしばらく前に邦訳があったとか。ひえー。知らなかった。

『そのコンピュータシステムが使えない理由』表紙ランダウアー『そのコンピュータシステムが使えない理由』アスキー、1997)

 変な事情の本。最初に IEEE Spectrum かなんかの書評に出てて、読んでみてこれはと思って企画書を書いてアスキーに出したら、もう版権とって別の人が訳しだしてる、残念でした、とのこと。ところがしばらくして連絡がきて、その「別の人」(だれだかぼくも知らない)が翻訳を投げたので、大急ぎでやってくれ、だって。変なの。ぼくはまあ、予定通りできたからいいんだけど。

『シティ・ライフ』表紙ドナルド・バーセルミ『シティライフ』(白水社、1995)全文 (pdf) 訳者あとガキ

 あと書きは書きっぷりが大人げないので、あとガキである。このとき、デビッド・ポラッシュ『ソフトマシーン』(ケッ、おそれ多いタイトルつけやがって)を読み直して、これはもう絶望的だと思った。こんなのがブンゲーひょーろんなら、そんなものは犬に喰われてしまうがいい(いや、犬だって喰わないか)。もっと、おれがこれを読んだときの感触をうまく説明してくれ!
 というわけで、こんな解説。でも、これはいつかどうしても翻訳したいと思っていた作家だったので、大満足。ホントにおもしろいのになあ。

『ニグロフォビア』表紙ダリウス・ジェームズ『ニグロフォビア』(白水社、1995)全文

 同じく「ライターズX」シリーズの一冊。
 ニガーラッパーっぽいのりの中流頭でっかち黒人作品という感じ。会ったときは、アメリカ初の独自の笑いや演劇の伝統は黒人を笑いものにするボードビルなのである、アメリカエンターテイメントとは黒人を見下す歴史なのである、という説を唱えてはいた。その後、何冊か出してはみたようだけれど、鳴かず飛ばずというところか。
 これまた再刊される見通しは限りなくゼロに近いなあ。

『モロク』表紙ヘンリー・ミラー『モロク』(大栄出版、1994)全文 (pdf)

 ヘンリー・ミラー幻の処女作。
 とにかく、自伝的な主人公をかっこよくすることだけ考えている小説で、だらしなさも仕事のできなさもすべて他人に転嫁して主人公は諦念と絶望と知性で運命の被害者として悪役を演じていることにしたいんだけれど、それに失敗している。「モロクはそこですばらしくも感動的な演説を繰り広げた」と書くけれど、その演説そのものは書けないといったトホホな部分多数で、訳しているときはへきえき。でもあとから読んでみると、それなりに味があるという見方もできるのかもしれない。
 最近出た日本語の選集にも入れてもらえない、かわいそうな作品ではある。大栄出版の「セクシャルレジスタンス」なるシリーズに入った。

『器官切除』表紙マイケル・ブラムライン『器官切除』(白水社、1994)全文

 「ライターズX」というシリーズの第一弾。このシリーズは 6 冊くらい続いたのかな。いまにして思うと、収められた作家たちのパワーは弱いなあ。だれも残っていない。
 この作家を見つけてきたのは、例によって柳下毅一郎だった。あいつは昔からいろんなものをよく読んでいた。比較的血の気の薄かった 1990 年代初頭のシーンでは、ここにおさめられたような作家でもかなり上のほうではあった。その中で、ブラムラインはちょっと異質で、あまりまじめに作家とかブンガクとか考えていない。それがかれのいいところではあった。その後、二冊出して、いまはどうしてるんだろう。アマゾンで検索してみても、それっきりのようで、残念ではある。いちばん可能性はあった作家だった。日本語版の表題作は、『ウォンバット』に載ったので、シリーズ収録はもう二つ返事という感じ。著者もいろいろ親切に答えてくれた。
 再刊される見通しは限りなくゼロに近いなあ。

キャシー・アッカー『アホダラ帝国』(ペヨトル工房、久霧亜子と共訳、1993)全文 訳者あとがき

 訳した本の中でタイトルがいっちゃん楽しくきまったのはこれだと思う。共訳の久霧亜子氏は昔から NW-SF (と言って知ってる人はあんましいないだろうが、高校から大学にかけての山形があるのはこの雑誌のおかげ)なんかでたくさん翻訳をしてる人で、いっしょに仕事できて光栄。やっぱ女性的な繊細さってのは男には出せないよねー。とはいえちまちましすぎたところもあって、そーゆーとこ女ってやっぱダメだと思うぜ、なんちて。
 しかしまさかアッカーが死ぬとは思わなかった。それもあんな、ニューエージのホーリスティックヒーリングなんぞにはまるとは。あなたがこれまで築いてきた(あるいは破壊してきた)ものって、結局なんだったんだ。

P・J・オローク『ろくでもない生活』(JICC 出版、1993)全文以上 訳者あとがき
ろくでもない生活
 結構好きな翻訳。罵倒全開の文章なので、こっちも全開にするだけ。楽だねー。なお、実際に本になったときは、かなり削ったのである。したがって、ここに挙げたのは本になったもの以上の代物。また本では、それにあわせて原稿の配置も変えてある。

ベルナール・チュミ『建築と断絶』鹿島出版会、1997)全文 訳者あとがき

 建築デザイン分野に進出! 最初はチュミの名前だけ見て持ち込んだ企画だったんだが、訳しているうちに腹がたってきて、あと書きを書く頃にはもうチュミが大嫌いになっていた。なお、日本にもチュミの取り巻きが(当然)いて、「こんなのなんて言ってチュミに説明すればいいんだ!」と激怒していたとか。説明しなきゃいいのに。それに、かれらがチュミの別の本を訳して同時期に出るはずだったのに一向に出ないのはなぁぜ? それはどう説明すんの、取り巻きさんたち? きらいな解説は読み飛ばせばいいけど、ない翻訳は読めない。そのほうが悪質で不誠実だと思うな。
 あと『ロンドン・アヴァンギャルド』という本を書いた人が、その文中でぼくのラ・ヴィレットの悪口について「けっ、金勘定ばっかで空間のわかんないやつが口を出すな」とか書いていた。やれやれ、まさにそれがダメなんじゃん。公共空間にくだらん選民思想もちこんでどうすんだい。あんただけの「空間」じゃないんだぜ。Linux Multimedia 表紙
 しかしそれ以外はおおむね好評。会社の女の子たちには「本文はちんぷんかんぷんだけど、あとがきにはすごく感動した。そうですよね、かっこつけた人より誠実がいいですよね」とおほめのことばをいただく(大得意)。それにしても森田さんは何を考えてこれをそのまま載せたのかな。絶対削られると思ったのに。ありがとうございます。

ジェフ・トランター『Linux マルチメディアガイド』オライリー、1997)

 Linux 本の単独訳。著者もとっても協力的で、楽しく楽な翻訳でした。

映画ブレードランナー 表紙
ウィリアム・バロウズ『映画ブレードランナー』(トレヴィル、1990)全文

 言わずと知れたウィリアム・バロウズのブレードランナー。あのリドリー・スコットの映画とはタイトル以外まったく関係ありません。

フィリップ・K・ディック暗闇のスキャナー(東京創元社、199)正誤表 全文

 ディックの名作。なんと邦訳刊行後 13 年たってから、原書の誤植と結果としての誤訳が判明。なお、2005 年頃に映画化されるとの情報が入って、不労所得! と喜んでいたら、創元が翻訳権を早川に取られてしまった。「でも山形なら訳もいいし商品価値あるからそっちでも使われるでしょう」と言われたが、何の音沙汰もなく 2005 年も半ば……と思ったら、なんと 2005/11 にいきなり浅倉久志訳『スキャナー・ダークリー』が出てしまった。しかも言いたくはないが、ぼくの訳より下手になっている(まあ自分のほうをひいき目に見ているだけかもしれないけれど)。もちろん浅倉さんだから、一定の水準は当然クリアしてはいるけれど、。偉大な先輩に多少なりとも勝てたと思えるのは、嬉しいと同時に残念。

フィリップ・K・ディック死の迷路(東京創元社、1989)pdf 全文

 ディックの凡作。

ヴィクター・ボックリスウィリアム・バロウズと夕食を(思潮社、1988>)訳者あとがき

 ウィリアム・バロウズの雑談集。


翻訳協力書

リチャード・H・セイラー『市場と感情の経済学』ダイヤモンド社、1998)
Olaf Kirsch 『Linux ネットワーク管理』第一版(オライリー、1997)
『セックスワーク』
『ルー・リード詩集』(梅沢葉子訳、河出書房新社)

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