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朝日新聞書評 2012/1-3

山形浩生

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ベイルズ&オーランド『アーティストのためのハンドブック』(フィルムアート社)

  自分に才能はあるのか、商業主義に迎合していいのか、このまま芽が出なかったらどうしよう、空気を読むべきか、スランプからどう脱出すべきか、自分のやっていることに意味はあるのか——本書が正面から取り組むアーティストの悩みは、他の人々も日々直面するものだ。そして本書が与える回答やヒントも、ごくストレートなものだ。才能より努力、でもその努力が報われる保証はない。正解はないので苦闘するしかない、でも同じ苦闘するなら、やりたいことをしよう——その答えも、他の仕事や活動すべてにあてはまり、アーティスト以外でも勇気づけられる。

 むろん、アート業界特有の問題などにも触れる。同じくアーティストの古典ガイドとして読み継がれ最近翻訳された、ヘンライ『アート・スピリット』よりは実務的ながら、いずれも長年読み継がれてきただけあって、シンプルで穏やかで普遍性を持つ。仕事、学業その他すべてに悩む人々におすすめ。 (2012/1/22 掲載, 朝日新聞サイト)

(コメント:最初、これは横尾さんにやってもらうといいかも、とか思ったけれど、すでに功成り名を挙げたアーティストよりは、もう少しつつましいところで頑張っている人のための本だと思う。)

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G・エスピン=アンデルセン『平等と効率の福祉革命――新しい女性の役割』(岩波書店)

(コメント:すばらしい本なんだが、本書の訳者解説には腹がたった。紙幅がなくて一行しか書けなかったけれど、ぼくは本書に対する誤解を招きかねないものとして積極的に批判されるべきだと思うし、またそれに迎合した邦題の副題のつけかたも、望ましくない。「新しい女性の役割」が主題じゃない。新しい女性の役割に対応した社会のありかたのほうが主眼だ。ところが訳者は、自分の専門のジェンダーなんとかの話につながる話ばかりに終始して、本書の中心的な議論について何も触れない。そんなの解題じゃなくて、自分の研究紹介だろう。何かかんちがいしているとしか思えない。
 訳者たちが本書につけた用語解説も、非常に疑問。「回帰分析」とか「外部効果」とかいうのに説明がいるかね。「学校環境」というのの解説は文化資本や学歴資本の話ばかりで学校環境についての説明皆無。「均衡」とか「協調的交渉」の説明で挙がっている参照文献は、ゲーム理論の初心者レベルの新書でげんなりだし、しかも最後まで読むと、結局それは実際の中身とは関係ないそうな。じゃあ長々とページ使って書くなよ。ぷんぷん。)



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YAMAGATA Hiroo<hiyori13@alum.mit.edu>
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