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alc2009年11月号
マガジンアルク 2009/12

『山形浩生の:世界を見るレッスン』 連載 44 回

岡田外相、スマトラ震災を視察……でも何もしない。

月刊『マガジン・アルク』 2009/12号

要約:スマトラ沖地震のときに岡田外相がやってきたんだけど、見ただけで何も支援を約束しないし、これまでいた支援部隊ともすれちがいだし、あまりに手際が悪すぎる。


 仮にあなたが政治家だとしよう。で、どっかで地震とか台風とか、大災害が起こった。さて、この機会を最大限に活用するには、どうしたらいいだろうか?

 当然、スピードが勝負だ。災害が起きて話題になりはじめたらすぐに、まずは自分がいかにそれを懸念しているかのアナウンスし、大きな支援を口先だけでも約束しよう。力があるなら、支援部隊を送り込もう。そして当初の混乱がおさまって救援が軌道に乗ったところで現地入り。支援部隊を激励する一方で、いろんなものが当然足りないだろうから事前に調べておいて、その場ですかさず「あれが足りない、ただちに増援を手配する!」とやれば、自分の慧眼や指導力を有権者にもアピールできる。被災者側だって、必要なものが手に入るなら、その程度のパフォーマンスには喜んでつきあうだろう。

 が、しばらくすると、もう緊急性はなくなる。救出できる人は救出しつくし、被災者のライフラインも確保される。緊急部隊も出番はなくなり、あとはもう瓦礫を片付けて、電気や道路をなおし、建物を再建して商売を再開し、という長い復興プロセスだ。そうなると、政治家が現地に視察にきてもしょうがない。気長に被災者たちが自力で日常を取り戻すのを支援するだけで、資金援助とか、インフラ再建くらいしかできることはない。が、そういう支援策をその場でアピールできるなら、まだ政治家が現地にきても見せ場は作れる。

 これをうまくやるかどうかで政治家の浮沈が左右される。9・11で、ジュリアーニ市長は見事な采配ぶりで一気に男を上げた。一方ブッシュは、カトリーナ台風被災地にいつまでも出かけなかったことで、大きくミソをつけた。

 さて、10 月 1 日にインドネシアのスマトラ沖で大地震があり、パダン周辺でものすごい被害が発生した。アメリカのオバマ大統領は、その日のうちにお見舞いのメッセージを出して、強い支援を約束。教科書通りですな。ところが、日本の政治家からは何もなし。

 それでも、日本は自衛隊や警察や海上保安庁などからすぐに緊急支援部隊を出した。えらい。かれらは十分に活躍して地元にも感謝され、そして一週間ほどで緊急活動が終わったのでほとんどは撤収した。

 ところが撤収した後で、地震発生から二週間もたってから、岡田外相がインドネシアにやってきた。アフガンとパキスタンで、給油打ち切りの弁解をしたついでなのはだれが見ても明らかだ。被災者のことを心配していると言うんだけど、ついでで来ただけじゃ説得力は皆無だ。そして被災地を視察して緊急支援部隊を激励というんだけど、もう大半は撤収済み。後片付けを激励されましても。また被災地に対しても何ら復興支援の具体的なタマを事前に何も考えてきていないという惨状。これから見て、何をするかこれから考えるんだって。大臣がちょろっと見てニーズがわかる段階はもう過ぎてるし、案を思いついて実行する頃にはもう復興だってほとんど終わってるだろう。被災地だって忙しいのに、どうせ何もしてくれるわけない要人に気を遣わされて、迷惑だっただろうなあ。

 いやほんと、ここまでありとあらゆる部分をまちがえるとは。災害援助って、政治家の売名ニーズと地元の支援ニーズとが見事に一致する、いちばん簡単で有効なパフォーマンスのはずなのに。ぼくはたまたま外相がきたときに、仕事でインドネシアにいたんだけど、現地の新聞では一切報道なし。だって報道できる発言も活動も、何一つないんだもの。すべてが後手後手で、しかも結局何一つ有効なことができてない。でもこれって外相に限らず、現政権のすべてにあてはまるような……



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YAMAGATA Hiroo <hiyori13@alum.mit.edu>
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